消化器癌治療の現場から|消化器癌への様々な取り組みをご紹介します。

第9回 総合病院 国保旭中央病院 化学療法センター

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総合病院としての特性を活かした包括的医療の実施

 総合病院におけるがん治療の利点として包括的医療を提供できる点が挙げられます (図5)。大腸癌を例に挙げると、消化器内科で術前評価を行い、外科との合同カンファランスで治療方針を検討します。術後の補助化学療法は外科で行いますが、切除不能・再発例の化学療法は、さまざまな有害事象や、基礎疾患に対する内科的対応が必要なことが多いため、消化器内科で行っています。口内炎が起こりやすい5FU系レジメンでは早期から歯科口腔外科に口腔衛生管理を依頼することで、軽症で治まる例が増えてきています。

図5 国保旭中央病院における包括的がん診療

 病状の程度にかかわらず精神的な負担が大きい場合や疼痛管理が困難な場合には、希望に応じて緩和ケアチームの協力を得ることもできますし、緩和ケア外来も利用できます。がんリハビリテーションは主として入院中に行いますが病状が悪化しながらも身体機能が維持できることから患者さんにとって非常に大きな意義を持ちます。臥床がちになった方がリハビリを開始することにより、精神的にも前向きになり、元気になられることも経験します。転移に対する治療ですが、脳転移にはエックスナイフが可能であり、骨転移などの疼痛コントロールには放射線治療を積極的に行っています。放射線治療や麻薬で疼痛コントロールが困難な場合にはペインクリニック (麻酔科) に神経ブロックを依頼することもあります。昨年からは「同じ辛さを体験した同士、患者同士で話をしてみたい」という患者さんの声を受け、医療ソーシャルワーカーが中心となり「がん患者サロン」を開催しています (写真2)。「友人や、家族には心配をかけたくなかったので、病気のことは話しづらかった。みんなが同じがん患者だと思うと安心して話せる」と楽しみにしてくださる方が少しずつ増えています。積極的な治療が困難となった場合には緩和ケア病棟や訪問看護室による在宅診療も利用可能です。

写真2:がん患者サロン

 化学療法による好中球減少性発熱や疼痛の悪化、腸閉塞など予期せぬ症状の対応は救命救急センターで行っています。救急センターの医師で対応が困難な場合には、全診療科が待機制で診療にあたります。

総合病院 国保旭中央病院 化学療法センターの今後の展望

 がん患者さんは診断を受けた時点からさまざまな問題を抱えるようになりますが、上述したように総合病院の利点を生かし各専門職種が多角的な支援ができることが患者さんにとっても大きな支えにつながると考えています。術後補助化学療法を含め有効な化学療法が増えていくなかで化学療法センターの位置づけは今後さらに重要となっていきます。患者さんの安全を守ることはもちろんですが、生活の質を損なわない治療をお受けいただきたいと常に考えています。当院は7つの科が利用する大所帯で診療も始まったばかりであることから課題も山積していますが、さらに充実した診療体制を築いていくつもりです。 (スタッフ集合写真)

集合写真
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