消化器癌治療の現場から|消化器癌への様々な取り組みをご紹介します。

第5回 第二岡本総合病院

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緩和ケアを意識した化学療法の実践

患者さんへの説明資料

 ご存じのように、“がん対策基本法”の第三章 第二節第十六条には、がん患者の療養生活の質の維持向上について、「がん患者の状況に応じて疼痛等の緩和を目的とする医療が早期から適切に行われるようにすること」と記されています。こうした観点から、がんは診断のついた段階から積極的に緩和医療の提供を行うべく、多職種からなる緩和ケアチームを整え活動しています。具体的には、緩和ケアチームの構成職種のうち、医師、薬剤師、がん相談支援室相談員、看護師の4名が協力体制を組み、また、必要に応じてソーシャルワーカーや栄養士が対応に加わり、それぞれが役割を分担してチーム外来を行い、がん治療に関するさまざまな相談や身体および精神症状の緩和についての相談を行っています(写真)。そして、われわれスタッフ間では週1回、各職種が集まってチームカンファレンスを開いて情報交換を行い、お互いの認識の統一や共有化を図っています。

 つまり、外来で化学療法を行っている患者さんであっても、また、入院で治療をされている患者さんであっても、ご家族を含めて早期から緩和ケアチームが面談する機会を設けることで、医療スタッフとのより良い関係が構築できるとともに、今後起こりうる症状の緩和や在宅緩和医療へのスムーズな移行が期待できると考えています。

大学病院および在宅医との地域医療連携の取り組み

 現在、京都市内にある京都大学医学部附属病院や京都府立医科大学附属病院と化学療法に関する連携協力体制を組んでおり、ある程度の化学療法導入期の後、地元に戻って治療の継続を希望される患者さんを多数受け入れるようになっています。また、前医から当院へのよりスムーズな化学療法の移行・継続を目的として、今年1月には院内に化学療法外来を新設しました。ここでは、今後行う化学療法の効果および副作用、ならびに緊急時・時間外の対応の説明とともに、外来化学療法室を利用した通院での治療の進め方などについても案内しています。

 さらに、“がん対策基本法”の第十六条には、先ほど説明した文言に続いて「居宅においてがん患者に対しがん医療を提供するための連携協力体制を確保すること」との記載があります。そのため、当院では在宅緩和医療への移行を念頭においた在宅医との診療連携についても協力体制を築き上げています。ただ、こうした在宅医との地域連携の構築にはいくつかの問題がみられました。すなわち、在宅医が在宅療養に移行した患者さんを24時間にわたって対応できるとは限らないこと、急変時や疼痛管理において適切な対応ができるとは限らないこと、などが在宅ケアを困難にしている大きな理由であることがアンケート調査によって判明しました。

 そこで当院では緩和ケアが必要な患者さんは登録制とし、こうした患者さんを緊急時には優先的に24時間必ず受け入れる体制を整えました。また、そのためのベッドを昼夜問わず常時確保する体制を組んでおります。当院がこのような対応をするということで、往診をしてくださる在宅医の数も増えてきました。さらに、入院での緩和医療を提供するため、2009年7月には急性期病棟である外科病棟に緩和ケア専用の病室(1床)を設置し、末期がん患者さんとそのご家族が同じ部屋で自由に過ごせる時間を持てるような対策を講じています。

 こうしたがん地域医療連携、地域緩和医療体制の強化を図る取り組みもあって、2009年12月に当院は京都府から地域がん診療連携協力病院に指定されました。

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