消化器癌治療の現場から|消化器癌への様々な取り組みをご紹介します。

第10回 国立病院機構 京都医療センター 外来化学療法センター/腫瘍内科

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外来化学療法センターにおける診療の実際

写真2 患者さん用説明用資料
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 患者さんは来院時に1階の外来受診受付機で手続きを済ませたあと、まず3階の外来化学療法センターで採血とルート確保を行います。これは、中央採血室を通さないことで迅速に検査結果が得られることと、採血とルート確保を一穿刺で同時に行う (一患者一治療一穿刺) ことによって患者さんの負担を減らすだけでなく、血管外漏出のリスクを軽減するよう配慮したためです。そして、その後各診療科での診察で治療の実施が決まれば、あらかじめオーダーされていたレジメンの調製確定を行い、薬剤科での無菌調製作業が始まります。患者さんは当センターに戻っていただき治療を開始し、終了後会計を済ませて帰られます。

 患者さんへのオリエンテーションとしては、受診の流れについて各診療科で説明することになっています。外来での化学療法、なかでも特に初回治療時においては外来化学療法センターの看護師が中心となって体調管理や副作用に関するセルフケア、緊急時の連絡方法などについて丁寧に説明し、また、当センターで投薬する治療薬はもとより、内服の抗がん剤や支持療法薬についても薬剤師から十分に説明しています。一方、入院中の患者さんに対しては、退院日、初回の外来治療日、および治療内容が決定した時点で当センターにおいてオリエンテーションを行うことにしており、当センターの看護師が主体となって説明するという流れになっています (写真2)。

チーム医療における総合病院の強み

 緊急時の対応方法を明確にさせておくことは特に重視している点です。診療科や主治医によって若干の違いはありますが、日勤帯・夜間休日のいずれの場合でも適切に対処できる体制を整えています。ちなみに、私自身の場合は、すべての患者さんに連絡用の電話番号をお教えしており、24時間対応できるようにしています。夜中に何度も電話がかかってくるといったことは滅多にありませんが、こうした連絡先があることで患者さんの安心感はずいぶん違うという印象を持っています。

 また、あらかじめ予測される副作用 (悪心、発熱性好中球減少や便秘・下痢) に対する薬を処方しておくことで、患者さんからの問い合わせのほとんどは電話で済ませることができます。もちろん必要時には救急外来を受診していただくことになりますが、救急外来・救命救急部の先生方も化学療法中の患者さんの特性をよくご理解いただいており、適切に対応いただいています。また、しばしば認められる循環器系の有害事象も電話一本ですぐに専門医に診てもらうことが可能ですし、さまざまな皮膚障害も皮膚科ですぐに対応してもらえます。このように、さまざまな診療科が揃っているわれわれのような総合病院は、こうした点で大きな強みであると言えますし、これは当院が縦割りの診療体制でなく、伝統的に十分な診療科間の協力体制が構築されていることに基づいているからなのです。

 副作用の対処については、看護師や薬剤師などのコメディカルから他科のコンサルテーションを勧められ、それで私のほうでも気付くことがあるのですが、こうしたコメディカルの専門的な意見に耳を傾けることはとても大事であると感じています。スタッフ間で自由に意見を出し合える環境作りは、連携・協力が不可欠なチーム医療においては非常に重要です。そこで、外来化学療法センターでは、多職種のスタッフを交えたカンファレンスを毎週水曜日に開催し、1週間のうちに起こったインシデントを皆で共有したうえで、問題点の解決策や患者さんのケアについて検討することにしています。

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