消化器癌治療の現場から|消化器癌への様々な取り組みをご紹介します。

第10回 国立病院機構 京都医療センター 外来化学療法センター/腫瘍内科

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より良いがん医療の提供に向けたこれまでの取り組みと新たな試み

 多くの進行・再発がん患者さんでは治癒の可能性はきわめて低く、化学療法の目的・目標は、症状緩和と延命ということになります。そういう意味では腫瘍内科が担っている役割の多くは緩和ケアに関連した業務であると言っても過言ではありません。

 こうしたなか、幸いなことにわれわれの地域では、伏見医師会が主導となって築き上げた地域における緊密な横とのつながり、すなわち病診連携あるいは病病連携がすでに確立・実現しています。実際、在宅ケアに熱心に取り組んでいただける開業医の先生方はとても多く、また、訪問看護ステーションなどとも良好な連携が図れています。さらに、地域の各病院にもがん医療の連携・協力体制作りに精力的に動いてもらえていますので、この地域が大変恵まれた環境にあることを実感しています。

 また一方で、京都府におけるがん薬物療法の発展を目的に、2009年11月、私を含めた京都府のがん薬物療法専門医6名が集い、“京都がん薬物療法専門医会”が発足しました。本会の1つの重要な使命は、がん患者さんのトータルケアができる専門家としてのがん薬物療法専門医の育成です。これは、近年のがん医療の目標が、標準治療の実践や生存期間の延長といった表層的なものから、総合的な満足の提供にシフトしているといった背景に基づくものです。もちろん、専門医の育成のみならず、さまざまな医療従事者に認知・理解を広げることで、がん医療の質全体を上げていくことも必須と考えていますので、年2〜3回開催している勉強会・講演会には医師に限定せずあらゆるコメディカルに声をかけ、多くの方にご参加いただいています。

患者さんの満足度をより高めるうえで医療スタッフや施設のさらなる充実は不可欠

写真3:リソースセンター

 院内の連携は大変良好と言えますが、医師の入れ替わりがどうしても多いため、外来化学療法センターの利用の仕方やルールについての周知徹底は継続的に進めていかなければならない課題の1つです。また、各職種それぞれが日常業務に追われスキルアップする機会が少ないので、院外の研究会だけでなく、院内で定期的に勉強会を開くようにすることが当面の目標です。

 最近の分子標的治療薬の特徴的な有害事象として、皮膚障害が広く認知されてきましたが、患者さんの日常ケアに看護師がどれだけ入り込んで指導できるかが、QOLを維持・向上させる大きな鍵を握っていると考えます。そのため、専門的な知識と経験を持ったがん化学療法看護認定看護師の存在は重要ですが、当院の認定看護師は今のところ1名 (現在もう1名が研修中) で、今後このような認定資格を目指す看護師を増やしていくことが大変重要と考えています。さらに、外来化学療法センターでは無菌調整を確保しているもののマンパワーの関係で現在のところ活用できておらず、さらなる人員確保が急務の課題となっています。

 外来化学療法センターの移転・拡張により、患者さんや家族の方には、待ち時間も含めて快適にご利用いただけるようになったと思います。がんに関する書籍や情報にアクセスできるリソースセンターを併設するとともに、10月より、NPO法人キャンサーリボンズと協同で “リボンズハウス”という、治療中の患者さんの生活をサポートする活動拠点がオープンしましたので、患者さんやご家族がいろいろな不安・悩みを相談したり情報交換できる場として活用されることを期待しています (写真3)。相談窓口として非常勤ですがスタッフも常駐しており、いつでも適切な対応ができるような体制を整えていきたいと考えています。 (スタッフ集合写真)

集合写真
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