消化器癌治療の現場から|消化器癌への様々な取り組みをご紹介します。

第11回 昭和大学横浜市北部病院 外来化学療法室

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外来化学療法に関するリスクマネジメントへの取り組み

 このような患者さんへの対応とともに、どの診療科においてもすべての医療行為について安全対策を講じ、事故を未然に防ぐ努力をしなければならないことは言うまでもありません。そこで当院では、医療安全管理室が「北部 まもる 君」 (図4) という安全への取り組みや手順のポイントを簡潔にまとめた冊子を作成し、院内のすべての医療スタッフに配布しています。この冊子は、スタッフが必ず携帯できるように手帳サイズで作られているのが特徴で、全スタッフが安全対策の共有を図るうえで不可欠なツールとなっています。がん化学療法における安全対策としては、抗がん剤の血管外漏出に関する対処法などが掲載されており、外来化学療法室でのリスクマネジメントにおいても活用しています。

 また、外来化学療法室専任の医師は配置されておりませんが、医師全員が携帯している院内PHSによって、主治医や担当医などと常時連絡がとれる体制になっています。さらに、緊急時に備えるため、各診療科において曜日ごとに必ず連絡がとれる医師を登録する仕組みを作っています。主治医や担当医などがどうしてもすぐに対応できない場合には、最終的に登録されている医師へ連絡するという準備をしておくことで、責任の所在をはっきりとさせており、これまでのところ、大きな支障が生じるケースは発生していません。

図4 「北部まもる君」

登録されているレジメンの再評価によって確固たるエビデンスを構築

 当院に設置されている化学療法プロトコール委員会は、現在医師9名、看護師2名および薬剤師4名の計15名で構成されており、新規のがん化学療法レジメンの審査の有無にかかわらず、毎月1回は必ず会議を開くこととしています。こうした会議の開催にあたっては、医師が務める委員長と薬剤師が務める副委員長、ならびに看護師の計4、5名が直前に集まって議題を事前に協議したうえで本会議に臨むという形をとっています。なお、原則として、新規のレジメン登録の際には申請書類とともに、根拠となる論文 (または資料) を必ず添付してもらうことを条件としています。しかし、なかには一般的・普遍的なレジメンでなく、ある患者さんだけに使用したいといった限定的なレジメン申請もあります。そのような場合でも、化学療法プロトコール委員会としては、安全性が確保されていれば承認するといった柔軟な対応をしています。

 2012年2月現在、承認されているレジメン数は210ほどになっていますが、これまでの申請書類、根拠となった論文 (または資料) などはすべて薬局で管理し、また、それを一覧に編集し電子カルテ上に掲載して、医療スタッフなら誰でも電子カルテを見ることで現在登録されているレジメンを確認できるようになっています。

 また、今から1年半ほど前、レジメン登録を開始して5年ほど経過したのを機に、当時登録されていた180ほどの院内登録レジメンの内容と新規レジメン登録時の根拠論文について再評価しています。そして、レジメンの科学性と倫理的妥当性を最も支持すると考えられる根拠論文に更新し、電子カルテ上で以前の一覧と対比できるようにしました。さらに現在、使用頻度の少ないレジメンについて、削除までしないにしてもブラインドをかけるなどの工夫を施し、整理していこうという話になっています。

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