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加藤: 実はここにいる外来化学療法室の専任看護師の佐々木さん、薬剤師の岡田先生、医療相談室の伊藤さん、緩和ケアチームの遠藤さんには、院内のスタッフが強く感じている“入院と外来とで患者さんの情報の受け渡しが十分ではないのではないか”といった点を解消し、多職種間のコミュニケーションのスキルアップによる入院と外来の継ぎ目のない連携の構築に尽力してもらっています。たとえば、毎週火曜日の朝、病棟で行われる化学療法科のミーティングへの全員での参加が、その1つです。
遠藤: また、病棟から緩和ケアチームに依頼があった患者さんについては、週1回カンファレンスを開いて、患者さんならびにご家族への対応に関して多職種間で情報を共有するとともに、患者さん・ご家族が戸惑わないよう、関与するスタッフの役割についても明確にしています。さらに、緩和ケアチームが関連した入院紹介あるいは在宅支援が必要となるような場合も、外来化学療法室のスタッフと緩和ケアチームのメンバーがニーズに応じて密接な連携が図れるようにしています。
加藤: 一方、地域での連携については、県内の他の医療圏にも県立病院は多く、それぞれが拠点病院となっているのですが、地元でなく、時間がかかっても当院に来られて治療を受けたいという患者さんが多いのは事実です。当然、われわれの本意でない部分もあるのですが、今のところ化学療法に関しては地域連携が十分図られているとは言えません。
伊藤: 当院では一昨年度から前立腺がん、昨年度からは胃がんと大腸がんの地域連携パスが導入されました。私はコーディネーターを務めていますが、「先生から離れたくない。ここに来ているから治療ができている」と地域の病院でなく、当院での診療継続を希望される患者さんが多くいらっしゃいます。これは、県民性や地域性が強く影響しているのかもしれませんが、徐々に患者さんや他の医療機関へ地域連携の重要性について伝えていかなければならないと考えています。
加藤: 連携先の医療機関に対し、術後フォローアップの地域連携パスからハードルを少しずつステップアップできるような依頼をしていって連携の体制が徐々に確立すれば、患者さんにも十分理解いただけると思うので、今はそうした体制作りの構築段階にあると言えます。
加藤: 診察室での話だけでない部分もお伝えできたらと考え、医療者側と患者さん・ご家族側との距離感を縮めるためのコミュニケーションツールの1つとしてニュースレター“ほほえみ”を毎月作成しており (図4)、本年4月には第17号の発行を迎えることとなりました。このニュースレターでは一般的な話題をはじめ、新薬の承認情報やがん化学療法中の日常生活上の注意点、それにスタッフ紹介などをしており、当科の待合いに置いて患者さんに自由に持って帰ってもらっています。また、バックナンバーが欲しいという患者さんもいますので、当院ホームページから閲覧できるようにしています。
佐々木: 患者さんは“ほほえみ”の発行を毎月とても楽しみにしていて、なかには大切にファイリングしている方もいます。患者さんには、加藤先生の思いや人柄を知ることができると大変好評です。
加藤: がん化学療法におけるチーム医療には、エビデンスの高い医療提供という軸とは異なる、心のケアといった別の軸があるべきだと思います (図5)。つまり、最終的に患者さんに還元されるべきものは、高いエビデンスの先進的な医療提供だけでなく、その方の理解や不安・悩みについての対応・支援が必要と考えます。こうした時、順天堂大学医学部 病理・腫瘍学教授の樋野興夫先生とたまたまお知り合いになることができ、ご指導を受けるなかで、2011年10月、当科にて“がん哲学外来”を開催していただきました。それは、日常の診察室ではみられない、疾患そのものを受け止めたうえでの生きがいや人生観に関するとても深い内容のお話で、私自身も非常に感銘を受けました。
外来化学療法室に通われている患者さんというのは、仕事や家庭に制限を受けながらも化学療法に望みをつないで生活しているわけですが、いつかは効果がなくなって中止の決断を迫られる時がきます。そして、その瞬間に支えがなくなるという状況に陥る可能性があります。ですから、そうした問題を乗り越えるためにも、精神面からの支援という1つの軸は不可欠で (図6)、“がん哲学外来”のような場を設けたいと考えました。そこで、がん患者さん同士が気持ちを伝え合い、そこに医療スタッフが一緒に加わって話をする試みとして、2011年12月から“メディカル・カフェ”を毎月1回のペースで開催し始めました。まだ、スタートしたばかりですが、患者さんが患者さんを励ますという場面は大変印象的です。
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