消化器癌治療の現場から|消化器癌への様々な取り組みをご紹介します。

第14回 釧路ろうさい病院 外来化学療法室

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外来化学療法をより安全に行うための看護師や薬剤師が果たす役割

図6 がん化学療法の副作用についての説明表
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宮城島: 初めにも触れましたが、2時間も3時間もかけて外来化学療法のために通院されている患者さんがいますので、副作用とその対処に対する患者さんの理解がより欠かせません。副作用対策としては、あらゆるプロトコール、レジメンにおいても対処できる、つまりどのような抗がん薬にも一般的によくみられる副作用への対応策を記した表を使用しています (図6)。

村山: この表には、患者さんそれぞれの治療レジメンに合わせて注意事項も書き込めます。特有の副作用がある抗がん薬を使っている患者さんには、製薬メーカーが作成している冊子を利用するなどして個別に対処法を説明しています。
 また、私たち専任の看護師は受診の目安について説明し、「何か心配なことや不安なことがある場合は、いつでも電話してもらって構いません」とお話しています。特に、外来化学療法室で1回目の治療を行った翌日は必ず患者さんに電話をし、体調の確認はもちろん、不安や心配なお気持ちをできるだけ払拭できるようにしています。そして、治療後には毎回、「次回までに調子が悪かったら、いつでも連絡してください」と伝えています。時間外や休日でも救急外来と連絡がとれる体制を整えていますので、24時間365日、常に対応できるようになっています。

谷向: 私は化学療法で欠かせないレジメンの管理を一任されています。現在、当院でのレジメン数は細かいものも含めて140〜150ですが、すでに使われていないようなレジメンもありますので、今後は専任スタッフでつくっている「化学療法運営委員会」で審議し、徐々に削除していくといった見直しが必要であると考えています。また、レジメンを最新の内容に修正する必要がある場合は、担当医に必要書類を提出してもらい、委員会で審議後アップデートしていますが、細かいマイナーチェンジ、たとえば「ステロイドを少し増量したい」といった場合は、患者さんの状態を把握したうえで委員会をとおすことなく許可するといった柔軟な対応もしています。

モチベーションの維持・向上には役割分担の明確化と権限の委任が不可欠

宮城島: 日々の運営において私たち専任の医師は必ずその中心にいて、外来化学療法における安全管理や危機管理に注力しています。しかし、化学療法というのはひとつのチーム医療ですから、「化学療法運営委員会」を毎月開催しています。
 一方で、高度な専門スキルをもち経験を積んだ看護師たちの自主性を尊重するという観点から、日常の運営では彼らに相当の役割を担ってもらっています。また、専任の薬剤師に化学療法レジメンの管理を全権委任し、レジメンの修正や追加は基本的に専任薬剤師だけが行える仕組みにしているのです。実は、こうした背景にはこの地域の慢性的な人材不足と、外来化学療法室に常駐できる専従の医師、看護師、薬剤師の確保が難しいといった点があります。そのなかで、現場に最も関わることができるのは専門の看護師であり、また、レジメンの管理が適切に行えるのは専門の薬剤師であるため、それぞれにプライドとモチベーションをもって遂行してもらえるよう、適切な役割分担に基づいた責務と権限の明確化を図っています。
 そして、このような取り組みをベースとした外来化学療法室の詳細な運営について「化学療法運営委員会」で活発に議論し、情報を緊密に共有することで、より安全で質の高い医療の提供へとつながっているのです。ただ、看護師からも話があったように、安全性のさらなる向上には他科との連携も関わってくるので、外来化学療法室だけでチーム医療が完結しているというわけでは決してありません。幸いなことに、院内での横のつながりは常にオープンで、いつでも相談できるような環境が整っており、各チームの枠を超えた非常に流動的な連携ができていると感じています。

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