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第4回 大腸癌肝転移に対する治療戦略

3. 大腸癌肝転移に対する治療

3.2 切除不能大腸癌肝転移
3.2.2 肝動注療法

 切除不能肝転移に対する肝動注療法は、肝転移巣に対する奏効率は良好であると報告されているが、OSの延長効果は明らかではない。CALGB 9481試験5-FU/LV療法への肝動注療法の上乗せを検証した無作為化比較試験である。奏効率 (24% vs. 47%, p=0.0012) およびOS (20ヵ月 vs. 24.4ヵ月, p=0.0034) において有意に肝動注併用群で良好であった96)。しかし、その後に行われた10試験のメタアナリシスでは、肝動注療法は肝転移巣への奏効率は高いものの、OSの延長効果は認めなかった97)
 これまでの肝動注療法に関する報告では、コントロール群の全身化学療法として5-FU/LV療法を用いており、現在の主流である多剤併用療法や分子標的治療薬を併用したレジメンに対する有効性は検証されていないことから、現時点では推奨されていない。

3.2.3 選択的内部照射療法 (SIRT)

 近年、β線源イットリウム90を含む放射性微小球 (90Yマイクロスフィア) を肝動脈内に注入し、組織内部から直接照射を行う選択的内部照射療法 (Selective internal radiation therapy:SIRT) の有効性が報告されている。
 Grayらは、切除不能のLLD大腸癌患者70例を対象に、FUDRによる肝動注療法単独群とSIRT併用群との無作為化比較試験を行い、奏効率 (SIRT併用群44% vs. 肝動注単独群18%)、肝転移無増悪期間 (同15.9ヵ月 vs. 9.7ヵ月) はSIRT併用群で良好な傾向であったものの、OS (同17ヵ月 vs. 15.9ヵ月) には差を認めなかったと報告した98)。Hehdlistzらは、5-FUによる全身化学療法単独群とSIRT併用群との無作為化比較試験を行い、PFSはSIRT併用群で有意に良好であった (SIRT併用群4.5ヵ月 vs. 化学療法単独群2.1ヵ月) と報告した99)
 また、FOLFOXとSIRTの併用療法の第I相試験において100)、奏効率90%と報告され、現在、肝転移を有する切除不能大腸癌を対象にFOLFOX療法単独とSIRTを併用する群を比較する第II/III相試験 (SIRFLOX試験) が進行中である101)
 なお、SIRTによる有害事象として、嘔気、腹痛、倦怠感を約50%に、重篤な合併症として肝機能障害 (0〜4%)、放射線性胆嚢炎 (<1%)、放射線性肺臓炎 (<1%)、胃十二指腸潰瘍 (<5%) が報告されている102)

3.2.4 RFA

 切除不能肝転移に対して、肝転移の制御を目的に化学療法にRFAを併用する治療戦略が試みられている。欧州では、肝転移9個以下かつ最大径4cm以下のLLD大腸癌患者を対象に、化学療法単独群と化学療法+RFA群の無作為化比較第II相試験 (EORTC40004試験) が行われ、PFSは併用群で良好であった (RFA併用群16.82ヵ月 vs. 化学療法単独群9.92ヵ月、HR=0.63、p=0.0249) が、主要評価項目である30ヵ月時生存率には有意差を認めなかった (同63.8% vs. 58.6%、中央値 3.78年 vs. 3.38年、HR=0.74、p=0.22) 103)
 現時点では、切除不能肝転移に対するRFAの有用性は明らかではなく、さらなるエビデンスの構築が必要である。

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