NCCNガイドライン67)は、全米の代表的な21施設のがんセンターによって結成されたネットワーク (NCCN:National Comprehensive Cancer Network) により作成されるガイドラインである。切除可能な肝転移に対する治療として、(1) 原発巣、転移巣切除→術後補助化学療法 (FOLFOX、FLOX、XELOX [CapeOX])、(2) 2〜3ヵ月間の術前化学療法→切除→経過観察または短期の化学療法、(3) 原発巣切除→2〜3ヵ月の術前化学療法→転移巣切除→経過観察または短期の化学療法、のいずれかを行うことが推奨されている。
補助化学療法は周術期で計6ヵ月間が推奨されている。
術後補助化学療法のレジメンとしては、stage IIIの術後と同様にFOLFOX、XELOX、 FLOX (以上、カテゴリー1) ならびにCapecitabine、5-FU/LV (以上、カテゴリー2A) が推奨されている。
一方、術前+術後化学療法のレジメンとしては、切除不能大腸癌全体に対する推奨レジメンと同様にFOLFOX/FOLFIRI/XELOX±Bevacizumab、FOLFOX/FOLFIRI±Panitumumab (KRAS 野生型)、FOLFIRI±Cetuximab (KRAS 野生型) がカテゴリー2Aで推奨されている。なお、FOLFOX+Cetuximab療法は、2012年版ではCOIN試験の結果に基づいて推奨レジメンから削除された。また、FOLFOXIRI療法は切除不能肝転移に対する選択肢 (カテゴリー2B) として記載されている。
EU Expert Panel Recommendationは、第6回International Colorectal Liver Metastases Workshopに参加した欧州21人の肝臓外科医と腫瘍内科医によってコンセンサスが得られたclinical recommendationである104)。肝転移を有する大腸癌を“Resectable (切除可能)” “Not optimally resectable (切除が最適でない)” “Unresectable and never likely to be resectable”の3群に分けて治療方針を示している (図5)。
“Resectable”例に対しては、EORTC40983試験の結果を受けて「術前 / 術後化学療法+手術」が推奨されている。ただし、2cm以下の単発肝転移例および予後良好例で、術前化学療法の奏効によって病変の同定が困難となる例では、「手術+術後補助化学療法」を推奨している。
一方、“Not optimally resectable”例は、(1) 以下の2つ以上の項目に合致する (肝転移個数5個以上、径5cmより大きい、同時性、リンパ節転移陽性、腫瘍マーカー高値)、(2) 切除が技術的に困難である (三肝静脈に近接、左右門脈枝に近接) と定義されている。
“Not optimally resectable”例では化学療法を先行し、切除可能となれば根治切除を行うことが推奨されている。
本邦の大腸癌治療ガイドライン医師用2010年版では、根治切除可能肝転移に対する治療方針として、肝転移切除単独が推奨されている。
肝切除後の補助化学療法は、確固たるエビデンスに基づく有効性が報告されていないことから「臨床試験として検証していくことが合理的」とされ、切除可能肝転移に対する術前化学療法は、EORTC40983試験においてFOLFOX群で手術合併症の頻度が高かった52) ことから「安全性に関しては課題が残されて」おり、「適正に計画された臨床試験でさらに検討すべき」と記載されている。
一方、切除不能肝転移に対する治療方針は、切除不能進行・再発大腸癌全体と区別されておらず、化学療法レジメンとしては、FOLFOX/XELOX±Bevacizumab、FOLFIRI±Bevacizumab、FOLFOX/FOLFIRI±Cetuximab (KRAS 野生型)、FOLFOX/FOLFIRI±Panitumumab (KRAS 野生型)、5-FU/LV±BevacizumabまたはUFT/LVが選択肢として記載されている。
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