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第4回 大腸癌肝転移に対する治療戦略

3. 大腸癌肝転移に対する治療

3.3 各国のガイドラインにおける大腸癌肝転移に対する治療戦略
3.3.1 NCCNガイドライン 2012

 NCCNガイドライン67)は、全米の代表的な21施設のがんセンターによって結成されたネットワーク (NCCN:National Comprehensive Cancer Network) により作成されるガイドラインである。切除可能な肝転移に対する治療として、(1) 原発巣、転移巣切除→術後補助化学療法 (FOLFOXFLOXXELOX [CapeOX])、(2) 2〜3ヵ月間の術前化学療法→切除→経過観察または短期の化学療法、(3) 原発巣切除→2〜3ヵ月の術前化学療法→転移巣切除→経過観察または短期の化学療法、のいずれかを行うことが推奨されている。
 補助化学療法は周術期で計6ヵ月間が推奨されている。 術後補助化学療法のレジメンとしては、stage IIIの術後と同様にFOLFOXXELOX FLOX (以上、カテゴリー1) ならびにCapecitabine5-FU/LV (以上、カテゴリー2A) が推奨されている。
 一方、術前+術後化学療法のレジメンとしては、切除不能大腸癌全体に対する推奨レジメンと同様にFOLFOX/FOLFIRI/XELOX±BevacizumabFOLFOX/FOLFIRI±Panitumumab (KRAS 野生型)、FOLFIRI±Cetuximab (KRAS 野生型) がカテゴリー2Aで推奨されている。なお、FOLFOX+Cetuximab療法は、2012年版ではCOIN試験の結果に基づいて推奨レジメンから削除された。また、FOLFOXIRI療法は切除不能肝転移に対する選択肢 (カテゴリー2B) として記載されている。

3.3.2 EU Expert Panel recommendation
図5 Treatment choices for patients with colorectal liver metastases (EU expert panel recommendation)
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 EU Expert Panel Recommendationは、第6回International Colorectal Liver Metastases Workshopに参加した欧州21人の肝臓外科医と腫瘍内科医によってコンセンサスが得られたclinical recommendationである104)。肝転移を有する大腸癌を“Resectable (切除可能)” “Not optimally resectable (切除が最適でない)” “Unresectable and never likely to be resectable”の3群に分けて治療方針を示している (図5)
 “Resectable”例に対しては、EORTC40983試験の結果を受けて「術前 / 術後化学療法+手術」が推奨されている。ただし、2cm以下の単発肝転移例および予後良好例で、術前化学療法の奏効によって病変の同定が困難となる例では、「手術+術後補助化学療法」を推奨している。
 一方、“Not optimally resectable”例は、(1) 以下の2つ以上の項目に合致する (肝転移個数5個以上、径5cmより大きい、同時性、リンパ節転移陽性、腫瘍マーカー高値)、(2) 切除が技術的に困難である (三肝静脈に近接、左右門脈枝に近接) と定義されている。 “Not optimally resectable”例では化学療法を先行し、切除可能となれば根治切除を行うことが推奨されている。

3.3.3 大腸癌治療ガイドライン医師用2010年版
図6 血行性転移の治療方針
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 本邦の大腸癌治療ガイドライン医師用2010年版では、根治切除可能肝転移に対する治療方針として、肝転移切除単独が推奨されている。
 肝切除後の補助化学療法は、確固たるエビデンスに基づく有効性が報告されていないことから「臨床試験として検証していくことが合理的」とされ、切除可能肝転移に対する術前化学療法は、EORTC40983試験においてFOLFOX群で手術合併症の頻度が高かった52) ことから「安全性に関しては課題が残されて」おり、「適正に計画された臨床試験でさらに検討すべき」と記載されている。
 一方、切除不能肝転移に対する治療方針は、切除不能進行・再発大腸癌全体と区別されておらず、化学療法レジメンとしては、FOLFOX/XELOX±BevacizumabFOLFIRI±BevacizumabFOLFOX/FOLFIRI±Cetuximab (KRAS 野生型)、FOLFOX/FOLFIRI±Panitumumab (KRAS 野生型)、5-FU/LV±BevacizumabまたはUFT/LVが選択肢として記載されている。

3. 大腸癌肝転移に対する治療【3.2.2】 目次へ 4. 大腸癌肝転移治療における諸問題と今後の展望
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