レジメン講座 | 抗癌剤併用レジメンの投与法を解説します。

S-1+Cisplatin(CDDP)+Trastuzumab(Tmab)

*S-1の用量は体表面積(m2)により調整
<1.25=40mg×2; 1.25−<1.50=50mg×2; ≧1.50=60mg×2

Kurokawa Y, et al.: Br J Cancer. 110(5): 1163-1168, 2014
Miura Y, et al.: Gastric Cancer. 21(1): 84-95, 2018

治療歴のない切除不能進行・再発HER2陽性胃癌に対する、S-1+CDDP(SP)+Tmab療法に関して2つの第II相試験が報告されている。HERBIS-1A試験1)ではAVAGAST試験2)やToGA試験3)など分子標的治療薬との併用化学療法でのスケジュールにならい、SP療法も3週サイクルが用いられた。WJOG7212G試験4)ではSPIRITS試験5)以降、本邦で標準的に行われていた5週サイクルのSP療法が採用された。SPIRITSレジメンの5週サイクルに、Tmabは3週サイクルで繰り返すため、投与時期がずれることに留意が必要である。

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■有効性

HERBIS-1A試験1)、WJOG7212G試験4)は、いずれも中央判定による奏効割合(RR)を主要評価項目に設定した第II相試験でpositive trialであった。全生存期間(OS)は、それぞれ16.0ヵ月、16.5ヵ月であり、ToGA試験3)のHER2高発現群(IHC 2+/FISH +またはIHC 3+)とも数値上、ほぼ同様であった。RR(HERBIS-1A:68% vs. WJOG7212G:61.4%)や無増悪生存期間(PFS:7.8ヵ月vs. 5.9ヵ月)は、3週サイクルのHERBIS-1A試験の結果が5週サイクルのWJOG7212G試験の結果を数値上、わずかに上回っている。これは3週と5週サイクルのSP療法の効果と安全性を検証したSOS試験6)で、3週サイクルが5週サイクルを上回った結果(RR:3週60% vs. 5週50%、PFS:3週5.5ヵ月vs. 5週4.9ヵ月)と一致するが、あくまで試験間比較であり、Tmabに併用するSPレジメンの優劣は当然ながら判断できない。これらの結果からいえることは、SP療法の投与スケジュールによらずTmabの上乗せ効果が期待できるということであろう。

  HERBIS-1A試験(n=53) WJOG7212G試験(n=44)
RR(95% CI) 68%(54-80%) 61.4%(45.5-75.6%)
PFS(95% CI) 7.8ヵ月(6.0-8.8ヵ月) 5.9ヵ月(5.0-9.3ヵ月)
OS(95% CI) 16.0ヵ月(13.3-NA) 16.5ヵ月(14.3-21.6ヵ月)

■安全性

HERBIS-1A試験1)、WJOG7212G試験4)におけるGrade 3以上の重篤な有害事象は、好中球減少 (HERBIS-1A:36% vs. WJOG7212G:29.5%)、貧血(15% vs. 18.2%)、食思不振(23% vs. 25.0%)、悪心(2% vs. 11.4%)、下痢(8% vs. 11.4%)などで、両試験とも治療関連死亡は1例のみであった。

HERBIS-1A試験1)、WJOG7212G試験4)の2つの臨床試験より、SP+Tmab療法の効果と安全性が示されている。しかしながら、Stage IVの胃癌では腹膜播種症例も多く、日常臨床では標的病変を有しない症例への投与がしばしば行われる。標的病変を有しないHER2陽性胃癌でのSP(3週サイクル)+Tmab療法の第II相試験(HERBIS-1B)の結果が待たれる。

レジメン解説執筆:がん研有明病院 消化器化学療法科 中山 厳馬 先生/高張 大亮 先生

References

  • 1) Kurokawa Y, et al.: Br J Cancer. 110(5): 1163-1168, 2014[PubMed
  • 2) Ohtsu A, et al.: J Clin Oncol. 29(30): 3968-3976, 2011[PubMed][論文紹介
  • 3) Bang YJ, et al.: Lancet. 376(9742): 687-697, 2010[PubMed][論文紹介
  • 4) Miura Y, et al.: Gastric Cancer. 21(1): 84-95, 2018[PubMed
  • 5) Koizumi W, et al.: Lancet Oncol. 9(3): 215-221, 2008[PubMed
  • 6) Ryu MH, et al.: Ann Oncol. 26(10): 2097-2101, 2015[PubMed][論文紹介
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