FOLFIRI + Cetuximab
*1サイクルの1日目のみ、Cetuximabの用量・投与時間を400mg/m2、120分とする |
Van Cutsem E., et al.: N Engl J Med. 360(14): 1408-1417. 2009 |
Cetuximabは、上皮成長因子受容体 (EGFR) を標的とした分子標的薬である。分子量約151,800のIgG1サブクラスのヒト/マウスキメラ型モノクローナル抗体で、米国California大学San Diego校にて開発された。リガンドのEGFRへの結合をブロックすることでEGFRを介したシグナル伝達を阻害し、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。現在、大腸癌、頭頸部癌などに対する有用性が確認されている。
※近年、がん組織のKRAS 遺伝子変異とCetuximabの有効性に密接な相関があることが相次いで報告された。RAS の活性化は、EGFRの活性化から始まる細胞内シグナル伝達の下流に位置する反応である。RAS の恒常的な活性化を伴うKRAS 遺伝子変異例 (mutant) では、Cetuximabの有効性が期待できないことが明らかになった。そのため、CetuximabはKRAS 遺伝子に変異がない野生型 (wild-type) に対する投与が推奨されている。
◆CRYSTAL試験
CRYSTAL試験は、切除不能進行・再発大腸癌の1st-lineとしてFOLFIRIにCetuximabを併用する効果を検証した無作為化第III相試験である。EGFRの発現がみられる切除不能進行・再発大腸癌患者がFOLFIRI + Cetuximab併用群とFOLFIRI単独群に無作為に割り付けられた。また、KRAS statusと治療効果との関連性についてのレトロスペクティブな解析も実施された。
■有効性
PFS中央値はFOLFIRI + Cetuximab群8.9ヵ月、FOLFIRI群8.0ヵ月であり、FOLFIRI + Cetuximab群で有意な延長が認められた (HR=0.85, 95% CI: 0.72-0.99, p=0.048)。 さらにKRAS status別に追加解析を行ったところ、KRAS 野生型ではFOLFIRI + Cetuximab併用群がFOLFIRI単独群に対し有意にPFSを延長したが (HR=0.68, 95% CI: 0.50-0.94, p=0.02)、KRAS 変異型では両群間に有意差がみられなかった (HR=1.07, 95% CI: 0.71-1.61, p=0.75)1)。
全体 | KRAS 野生型 | KRAS 変異型 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
FOLFIRI + Cetuximab (n=599) |
FOLFIRI (n=599) |
FOLFIRI + Cetuximab (n=172) |
FOLFIRI (n=176) |
FOLFIRI + Cetuximab (n= 105) |
FOLFIRI (n=87) |
|
PFS中央値 (月) |
8.9 | 8.0 | 9.9 | 8.7 | 7.6 | 8.1 |
HR (95% CI) |
0.85 (0.72-0.99) |
0.68 (0.50-0.94) |
1.07 (0.71-1.61) |
|||
p値 | 0.048 | 0.02 | 0.75 |
■安全性
FOLFIRI + Cetuximab群とFOLFIRI群でみられたgrade 3以上の主な有害事象は、好中球減少 (28.2% vs. 24.6%)、白血球減少 (7.2% vs. 5.1%)、下痢 (15.7% vs. 10.5%)、倦怠感 (5.3% vs. 4.7%)、皮疹 (8.2% vs. 0%)、ざ瘡様皮膚炎 (5.3% vs. 0%)、嘔吐 (4.7% vs. 5.0%) であり、grade 3以上の有害事象の発現頻度はFOLFIRI + Cetuximab群で高い傾向が認められた (79.3% vs. 61.0%, p<0.001)1)。
Reference
- 1) Van Cutsem E., et al.: N Engl J Med. 360(14): 1408-1417. 2009[PubMed]
- 副作用対策講座「皮膚障害-1 分子標的薬の皮膚障害」
- 副作用対策講座「下痢」
GI cancer-net
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