皮膚障害は、使用する薬剤により異なる発現機序を示し、症状も異なる。消化器癌領域においては、CetuximabやPanitumumabなど抗EGFR抗体薬投与時に、8〜9割を超える患者に皮膚障害の発現がみられるため、適切なマネジメントが必要である。
症状
ざ瘡様皮疹、皮膚乾燥、爪囲炎が主な症状として挙げられる。また、毛周期にも影響を与え、縮毛や長睫毛症などを生じることもある。
ざ瘡様皮疹 | : | 好発部位は顔面と前胸部、背部、前腕など体幹上部である。悪化するとそう痒感や痛みを伴う。 |
- 皮膚乾燥: 皮膚が乾燥し、そう痒などを生じる。また、手指に亀裂が現れ、QOLを損ねる一因となる。
- 爪囲炎: 痛みや爪の発育障害を伴い、重篤化すると肉芽、膿瘍を合併する。
発現機序
上皮細胞に存在するEGFRは、EGFなどのリガンドと結合することで活性化し、腫瘍細胞の増殖や転移、血管新生などを引き起こす。抗EGFR抗体薬は、このEGFRとリガンドとの結合を阻害してEGFRの機能を抑制する。
一方EGFRは正常の皮膚組織において、ケラチノサイトの増殖、分化をコントロールすると考えられている。EGFRが阻害されると、ケラチノサイトの増殖・移動が停止し、アポトーシスが誘導される。さらに炎症性サイトカインの放出が惹起されることで、表皮全体が薄くもろくなり、壊れやすく保湿できない皮膚になると考えられている。
皮膚障害は図1に示したような過程を経て発現する。
- ざ瘡様皮疹: 皮膚障害のなかで最も早期にみられる事象で、投与後1週目以降に発現する。
- 皮膚乾燥: 皮疹に続いて生じ、投与後3〜5週以降に発現する。
- 爪囲炎: 遅発的に生じることが多く、投与後4〜8週程度から発現し、6ヵ月頃までみられる。
Grade分類は主にCTCAE v4.0等を用いることが一般的である。CTCAE v4.0における皮膚障害のGrade分類では、「皮膚障害の体表面積に占める割合」が基準となることが多いが、評価が容易ではなく、こだわり過ぎる必要はない。実臨床において重要なのは「患者の日常生活への影響」であり、患者の状況を優先して評価することが勧められる。
抗EGFR抗体薬 (Panitumumab、Cetuximab) と殺細胞性抗癌剤との併用療法ならびに抗EGFR抗体薬単剤投与の際に、発現がみられる。
FOLFOX+Panitumumab | FOLFIRI+Panitumumab | CPT-11+Panitumumab | Panitumumab単剤 |
FOLFOX+Cetuximab | FOLFIRI+Cetuximab | Cetuximab+CPT-11 | Cetuximab単剤 |
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