FOLFOX + Cetuximab
*1サイクルの1日目のみ、Cetuximabの用量・投与時間を400mg/m2、2hとする。 |
Bokemeyer C, et al.: J Clin Oncol. 27(5): 663-671, 2009 |
Cetuximabは、上皮成長因子受容体 (EGFR) を標的とした分子標的薬である。分子量約151,800のIgG1サブクラスのヒト/マウスキメラ型モノクローナル抗体で、米国California大学San Diego校にて開発された。リガンドのEGFRへの結合をブロックすることでEGFRを介したシグナル伝達を阻害し、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。現在、大腸癌、頭頸部癌などに対する有用性が確認されている。
※近年、がん組織のKRAS 遺伝子変異とCetuximabの有効性に密接な相関があることが相次いで報告された。RASの 活性化は、EGFRの活性化から始まる細胞内シグナル伝達の下流に位置する反応である。RAS の恒常的な活性化を伴うKRAS 遺伝子変異例 (mutant) では、Cetuximabの有効性が期待できないことが明らかになった。そのため、CetuximabはKRAS 遺伝子に変異がない野生型 (wild-type) に対する投与が推奨されている。
◆OPUS試験
OPUS試験は、切除不能進行・再発大腸癌の1st-lineにおいて、FOLFOX4 + Cetuximab併用療法とFOLFOX4単独療法を比較した多施設共同無作為化第II相試験である。
18歳以上、余命12週以上、ECOG PS ≦2、肝臓、腎臓、骨髄の機能が正常である患者が適格とされ、FOLFOX4 + Cetuximab群とFOLFOX4群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。
■有効性
主要評価項目である奏効率はFOLFOX4 + Cetuximab群46%、FOLFOX4群36%であり、FOLFOX4 + Cetuximab群で良好な傾向であった。
なお、その後KRAS statusと治療効果との関連性が明らかとなったため、KRAS status別のレトロスペクティブ解析が行われた。その結果、KRAS 野生型では、奏効率はFOLFOX4 + Cetuximab群57%、FOLFOX4群34%と、FOLFOX4 + Cetuximab群で有意な改善が認められた (Odds ratio=2.551, p=0.0027)。また、PFS中央値もFOLFOX4 + Cetuximab群8.3ヵ月、FOLFOX4群7.2ヵ月であり、Cetuximab併用により有意な延長が認められた (HR=0.567, p=0.0064)。一方、KRAS 変異型では奏効率 (HR=0.459, p=0.0029)、PFS (HR=1.72, p=0.0153) ともにFOLFOX4 + Cetuximab群で有意に不良であった。
KRAS 野生型 | KRAS 変異型 | |||
---|---|---|---|---|
FOLFOX4 + Cetuximab (n=82) |
FOLFOX (n=97) |
FOLFOX 4 + Cetuximab (n=77) |
FOLFOX (n=59) |
|
奏効率 (95% CI) |
57% (46-68) |
34% (25-44) |
34% (23-46) |
53% (39-66) |
Odds ratio (95% CI) |
2.551 (1.380-4.717) |
0.459 (0.228-0.924) |
||
p値 | 0.0027 | 0.029 | ||
PFS中央値 (95% CI) |
8.3 (7.2-12.0) |
7.2 (5.6-7.4) |
5.5 (4.0-7.3) |
8.6 (6.5-9.4) |
HR (95% CI) |
0.567 (0.375-0.856) |
1.72 (1.104-2.679) |
||
p値 | 0.0064 | 0.0153 |
■安全性
Grade 3/4の有害事象のうち最も多かったのは好中球減少で、FOLFOX4 + Cetuximab群の30%、FOLFOX4群の34%に認められた。皮膚障害 (18% vs. 0.6%)、心毒性 (5% vs. 0%) の発現頻度はFOLFOX4 + Cetuximab群で高い傾向にあったが、いずれも忍容可能であった2)。
Reference
- 副作用対策講座「皮膚障害-1 分子標的薬の皮膚障害」
- 副作用対策講座[末梢神経障害]
- 副作用対策講座「下痢」
GI cancer-net
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