Infusional 5-FU/LV+Bevacizumab(simplified LV5FU2+Bevacizumab)
Kabbinavar FF, et al.: J Clin Oncol. 23(16): 3706-3712, 2005 |
Simplified LV5FU2(sLV5FU2)はde Gramont regimen(classic LV5FU2: cLV5FU2)より2日目のLeucovorin(LV)と5-FUの急速静注を省き、1日目の5-FU持続静注を46時間投与にした簡略な投与スケジュールである。sLV5FU2は、OxaliplatinやIrinotecan(CPT-11)と併用したFOLFOX6、FOLFIRIとして施行されることが多い。sLV5FU2とBevacizumab(BV)を併用した前向きな結果は存在しないものの、FOLFOX6、FOLFIRIにBVを上乗せすることの有効性・安全性が多くの試験にて報告されており、sLV5FU2+BVの安全性は担保されるものと考えられる。ただし、大腸癌診療ガイドラインでは、高齢者や臓器機能障害を有し、強力な治療が適応とならない患者に対して、sLV5FU2+BVレジメンが推奨されている。FOLFOX6+BV、FOLFIRI+BVの臨床試験では、高齢者(特に75歳以上)を対象としていないことが多く、高齢者に対するsLV5FU2+BVレジメンの安全性と有効性が懸念される。
◆FFCD試験
75歳以上の切除不能進行・再発大腸癌患者を対象として、1st-lineにおけるcLV5FU2もしくはsLV5FU2に対してCPT-11の上乗せ効果を検討した第III相試験である1)。4群のコホートがあり、適格症例282例が、cLV5FU2群とsLV5FU2群、cLV5FU2+CPT-11群とFOLFIRI群に1:1:1:1の割合で無作為化割り付けされた。
◆AVF0780g試験/AVF2192g試験/AVF2107g試験の統合解析
切除不能進行・再発大腸癌患者を対象として、1st-lineにおけるRPMI(Roswell Park Memorial Institute)またはbolus 5-FU/LV+CPT-11(IFL)に対してRPMI+BVの有効性を検討した3つのランダム化比較試験をメタ解析した結果が報告された2)。RPMIまたはIFL群241例に対してRPMI+BV群249例であった。
これらの試験結果をもとに、cLV5FU2とsLV5FU2の同等性、FU製剤にBVを併用することの有効性と安全性について検討する。
■有効性
FFCD試験の主要評価項目はLV5FU2群とCPT-11群におけるPFSの中央値ならびに、CLASSIC群(cLV5FU2 or cLV5FU2+CPT-11)とSIMPLIFIED群(sLV5FU2 or FOLFIRI)におけるPFSの中央値である。LV5FU2群5.2ヵ月、CPT-11群7.3ヵ月であり、両群で有意差を認めなかった(p=0.15)。同様にCLASSIC群6.5ヵ月、SIMPLIFIED群6.0ヵ月で、有意差を認めなかった(p=0.19)。cLV5FU2とsLV5FU2でサブグループ解析がなされ、PFS中央値はcLV5FU2 4.71ヵ月、sLV5FU2 5.29ヵ月であり、同程度であった。
LV5FU2群 (n=142) |
CPT-11群 (n=140) |
HR (95% CI) |
P値 | |
PFS中央値 | 5.2ヵ月 | 7.3ヵ月 | 0.84 (0.66-1.07) |
0.15 |
OS中央値 | 14.7ヵ月 | 14.9ヵ月 | 0.96 (0.75-1.24) |
0.77 |
CLASSIC群 (n=141) |
SIMPLIFIED群 (n=141) |
HR (95% CI) |
P値 | |
PFS中央値 | 6.5ヵ月 | 6.0ヵ月 | 0.85 (0.67-1.09) |
0.19 |
OS中央値 | 15.2ヵ月 | 11.4ヵ月 | 0.71 (0.55-0.92) |
0.01 |
統合解析の主要評価項目はOS中央値であり、RPMIもしくはIFL群14.6ヵ月とRPMI+BV群17.9ヵ月であり、RPMI+BV群で有意な延長を認めた(p=0.0081)。また、PFS中央値もRPMIもしくはIFL群5.6ヵ月とRPMI+BV群8.8ヵ月であり(p≦0.0001)、奏効割合もRPMIもしくはIFL群24.5%とRPMI+BV群34.1%とRPMI+BV群で有意であった(p=0.019)。
RPMI/IFL (n=241) |
RPMI+BV (n=249) |
HR (95% CI) |
P値 | |
奏効割合 | 24.5% | 34.1% | − | 0.019 |
PFS中央値 | 5.6ヵ月 | 8.8ヵ月 | 0.63 (0.5-0.78) |
0.0001 |
OS中央値 | 14.9ヵ月 | 17.9ヵ月 | 0.74 (0.59-0.93) |
0.0081 |
■安全性
FFCD試験においてCTCAE grade(以下grade)3以上の有害事象発現割合はLV5FU2群52.2%、CPT-11群76.3%とCPT-11併用regimenで高い結果であった。特に、CPT-11群では好中球減少(5.2% vs. 38.5%)、発熱性好中球減少症(0.7% vs. 7.4%)、悪心(1.5% vs. 6.7%)、嘔吐(1.5% vs. 5.9%)、下痢(5.2% vs. 22.2%)、血栓症(3.0% vs. 8.9%)が高いことが示された。CLASSIC群とSIMPLIFIED群で有害事象の発現頻度に有意な差を認めなかった。
統合解析試験では、RPMIもしくはIFL群と比較してRPMI+BV群において、grade 3以上の高血圧の頻度が上昇したが(3% vs. 16%)、その他の有害事象において有意な差を認めなかった。
以上のことから、高齢者や臓器機能障害を有し、強力な治療が適応とならない切除不能進行・再発大腸癌患者の1st-lineとして、sLV5FU2+BVは選択肢の一つとなり得ると考えられる。
レジメン解説執筆:聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座 伊澤 直樹 先生
References
GI cancer-net
消化器癌治療の広場