切除不能大腸癌肝転移に対する標準治療は全身化学療法であるが、最近RFAを併用する報告が増えてきている。しかし、RFAの有効性を示す前向き試験はなく、今回、切除不能肝転移を対象にRFA+全身化学療法併用の有効性と安全性を評価する無作為化比較第II相試験を行った。
下記の適格基準を満たす切除不能大腸癌をRFA±追加切除+FOLFOX療法 (RFA併用群) とFOLFOX療法 (FOLFOX単独群) に無作為に割り付けた。
・適格基準 | : | 切除不能肝転移症例、肝転移個数10個未満、RFAの対象となる肝転移の最大径が4cm以下、肝外転移なし、前化学療法歴がある場合は少なくともSDが維持されている、PS 0-1、年齢18-80歳。 |
・一次エンドポイント | : | 30ヵ月overall survival (OS)、α=10%、β=10%、RFA併用群の閾値38%、期待値 53%、必要症例数は各群76例 (計152例)。 |
・二次エンドポイント | : | progression-free survival (PFS)、安全性、QOL。 |
・治療 | : | FOLFOX療法の期間は6ヵ月間とし、以降の治療は主治医判断とした。2006年以降はFOLFOX+bevacizumab療法に変更した。 |
症例集積が不良のため、119例で登録が終了された (2002年4月-2007年6月)。RFA併用群に60例、FOLFOX単独群に59例が登録され、患者背景はRFA群で肝転移個数が1個の症例が多かった (それぞれ25%、11.9%)。RFA併用群に登録された60例のうち3例は無治療、6例はRFAのみが施行され、RFA後に追加切除が行われたのは27例であった。FOLFOX単独群に登録された59例中、7例 (12%) に経過中に手術が行われた。RFA併用群で術後死亡を1例認め、FOLFOX療法中のgrade 3/4有害事象は心毒性がRFA併用群で多かった (それぞれ9.8%、1.7%)。観察期間中央値4.4年の時点で、30ヵ月OSがRFA併用群で63.8%、FOLFOX単独群で58.6%、OS中央値が3.8年、3.4年 (HR=0.74、95%CI:0.46-1.19、p=0.2176)であった。増悪をそれぞれ42例、53例(肝転移増悪 64.3%、84.9%) に認め、PFS中央値は16.8ヵ月、9.9ヵ月(HR=0.63、95%CI:0.42-0.95、p=0.0249) であった。
RFA併用群で30ヵ月OSの閾値 (>38%) を超えることができたが、FOLFOX単独群 (2006年以降FOLFOX+bevacizumab) でも同様の結果であった。RFA+全身化学療法は安全に施行でき、全身化学療法単独と比較してPFSを有意に延長させた。
転移性肝腫瘍に対して我が国でもRFAが積極的に施行されているが、これまでその有効性や安全性に関して全身化学療法と比較した試験はなく、本試験が初めての前向き試験である。一次エンドポイントを30ヵ月OS>38%と設定したが、両群でこの閾値をはるかに上回る成績が得られた。肝外病変を有さない肝転移単独の症例は予後が比較的良好であることが確認された。本試験の結果から、肝転移単独の症例に対しては、RFAが有効で安全な治療手段であるケースが示唆された。本来であれば検証的な第III相試験の実施が必要であるが、対象が限定されること、欧米ではRFAは市中病院で実施されるケースが多いこと、治療法のmodalityが著しく異なることなどから、これ以上の無作為化比較試験の実施は困難であることが指摘されていた。RFAは我が国でも積極的に実施されているため、我が国独自で検証的試験を実施することが期待される。
(レポート:山崎 健太郎 監修・コメント:寺島 雅典)