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2009年1月〜2015年12月の論文紹介
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6月
監修:国立がん研究センター中央病院 消化管内科 医長 加藤 健

胃癌 胃食道接合部癌

治療歴のある進行胃癌/進行胃食道接合部癌に対するPembrolizumab単剤療法の第II相試験(KEYNOTE-059試験)


Fuchs CS, et al.: JAMA Oncol. 2018 Mar 15[Epub ahead of print]

 胃癌の多くは進行癌で発見され、その治療選択肢は限られる。プラチナ製剤とフッ化ピリミジン系薬剤は進行胃癌の一次治療として最も頻用され、OS中央値は8〜17ヵ月である1,2)。二次治療においてはRamucirumab単剤またはタキサンやIrinotecanとの併用が選択肢となるが3-5)、二次治療以降の治療オプションは十分とは言えない。

 Cancer Genome Atlasにおいて、胃癌を対象とした分子学的解析でPD-L1/PD-L2遺伝子が同定され6)、他の研究では免疫組織学的に胃癌にPD-L1の発現が同定された7)。PembrolizumabはPD-1と結合する選択的、ヒト型、高親和性IgG4-κモノクローナル抗体であり、第1b相試験であるKEYNOTE-012試験においてPD-L1陽性進行胃癌/胃食道接合部癌の患者39例に対し、22%の奏効率を示した8)

 KEYNOTE-059試験は3コホートの第II相試験であり、コホート1は2 line以上の治療に対して進行を認めた転移性胃癌/胃食道接合部癌の患者に対するPembrolizumabの効果と安全性を明らかにする目的で行われた。

 本試験は多施設、オープンラベル、非無作為化、3コホートの第II相試験として行われた。進行胃腺癌/胃食道接合部腺癌を対象として17ヵ国、67地域で行われた(コホート1は16ヵ国52地域で行われた)。

 コホート1は、Pembrolizumab単剤(day 1に200 mg、3週毎)を投与し、病勢進行、忍容できない毒性、主治医や患者自身による中止、試験治療の逸脱、または35サイクル完遂まで継続された。

 腫瘍効果判定は治療開始9週後、その後は最初の1年間は6週毎、それ以降は9週毎に画像評価した。

 有害事象は治療中、最終投与から30日間、重篤な有害事象は最終投与から90日間観察した。

 本コホートにおける推定サンプルサイズは約210人であり、患者は非無作為に割付され、PD-L1の発現は中間解析まで隠された。

 対象は18歳以上、組織学的に再発または進行転移性胃腺癌/胃食道接合部腺癌と診断され、計測可能病変があり、フッ化ピリミジン系薬剤とプラチナ製剤を含む化学療法2 line以上の治療で病勢進行を認め、HER-2陰性もしくはTrastuzumabの治療歴があるHER-2陽性症例、ECOG PS 0-1、十分な臓器機能があり、3ヵ月以上の生存が見込まれるものとした。

 効果と安全性は少なくとも1回のPembrolizumabを投与された全患者で解析され、主要評価項目は奏効割合であった。治療ライン、治療ラインとPD-L1ステータス、MSIステータスによる治療効果と効果期間のサブグループ解析が行われた。

 患者は試験登録前にPD-L1を計測するための組織が提出された。Pembrolizumabの治療を受けた患者の治療前腫瘍サンプルは臨床的利益と相関する免疫関連遺伝子を同定するために18-gene T-cell-inflamed遺伝子シグネチャーを用いて解析が行われた。

 2015年3月2日から2016年5月26日までに259人の患者がコホート1に登録された。

 年齢中央値は62歳(範囲24〜89歳)、男性が76.4%、白人が77.2%であった。約半数(51.7%)の患者は2 lineの化学療法治療歴があり、残りは3 line以上の治療歴があった。133例(51.4%)が胃食道接合部癌であった。259例のうち148例(57.1%)がPD-L1陽性、109例(42.1%)がPD-L1陰性であった。追跡期間中央値は5.8ヵ月(範囲0.5〜21.6ヵ月)であった。

 治療中止の最多理由は病勢進行で168例(64.9%)であった。死亡が26例(10%)、有害事象による中止が20例(7.7%)であった。

 259例中30例(11.6%、95% CI: 8.0-16.1%)で奏効が得られ、CRの評価が6例(2.3%、95% CI: 0.9-5.0%)、奏効までの期間中央値は2.1ヵ月(範囲1.7〜6.6ヵ月)であった。ベースライン以降に1回以上の画像評価が行われた223例のうち、95例(42.6%)で病変の縮小を認めた。奏効期間中央値は8.4ヵ月(範囲1.6+〜17.3+ヵ月)であり、奏効した30例中16例(53.3%)は現在も奏効が持続している。

 PFS中央値は2.0ヵ月(95% CI: 2.0-2.1ヵ月)、6ヵ月PFS割合は14.1%(95% CI: 10.1-18.7%)であった。OS中央値は5.6ヵ月(95% CI: 4.3-6.9ヵ月)、6ヵ月OS割合は46.5%(95% CI: 40.2-52.6%)、12ヵ月OS割合は23.4%(95% CI: 17.6-29.7%)であった。

 PD-L1陽性患者における奏効割合は15.5%(95% CI: 10.1-22.4%)、CRは2.0%(95% CI: 0.4-5.8%)、奏効期間中央値は16.3ヵ月(範囲1.6+〜17.3+ヵ月)であった。PD-L1陰性患者における奏効割合は6.4%(95% CI: 2.6-12.8%)、CRは2.8%(95% CI: 0.6-7.8%)、奏効期間中央値は6.9ヵ月(範囲2.4〜7.0+ヵ月)であった。

 3rd-lineとしてPembrolizumabを投与した患者の奏効割合は16.4%(95% CI: 10.6-23.8%)、4th-line以降に投与した患者の奏効割合は6.4%(95% CI: 2.8-12.2%)であった。

 PD-L1陽性で3rd-lineとしてPembrolizumabを投与された患者の奏効割合は22.7%(95% CI: 13.8-33.8%)、CRは2.7%(95% CI: 0.3-9.3%)、奏効期間中央値は8.1ヵ月(範囲1.6+〜17.3+ヵ月)であった。PD-L1陰性で3rd-lineとしてPembrolizumabを投与された患者の奏効割合は8.6%(95% CI: 2.9-19.0%)、CRは3.4%(95% CI: 0.4-11.9%)、奏効期間中央値は6.9ヵ月(範囲4.4+〜7.0+ヵ月)であった。

 259例中174例(67.2%)でMSIが評価された。MSI-highであった7例(4.0%)のうち、4例(57.1%、95%CI: 18.4-90.1%)で奏効が得られ、MSI-highでない167例のうち、15例(9.0%、95% CI: 5.1-14.4%)で奏効が得られた。

 18-gene T-cell-inflamed遺伝子発現プロファイリングスコアはnonresponderと比較してresponderでより高いスコアであった。スコアがより高いと明らかな効果の改善(p=0.01)とPFSの改善(p=0.002)がみられた。T-cell-inflamed遺伝子発現プロファイリングスコアとPD-L1発現は非線形の関連があった。

 データカットオフ時の259例の治療期間中央値は2.1ヵ月(範囲0.03〜21.40ヵ月)、投与回数中央値は4.0回(範囲1.0〜32.0回)であった。

 全gradeの有害事象は248例(95.8%)で解析され、159例(61.4%)においてgrade 3-5の有害事象を認めた。全gradeの治療関連有害事象は156例(60.2%)で認め、46例(17.8%)でgrade 3-5の治療関連有害事象を認めた。最も多い有害事象は疲労、掻痒、皮疹、甲状腺機能低下、食欲不振、貧血、嘔気下痢、関節痛であった。2例(0.8%)で胆管狭窄と肝機能異常のため治療継続が中止となった。治療関連死は2例(0.8%)で認め、急性腎障害と胸水貯留であった。

 全gradeの免疫関連有害事象は46例(17.8%)で認め、甲状腺機能低下症(23例、8.9%)が最も多く、次いで甲状腺機能亢進症(9例、3.5%)、大腸炎(6例、2.3%)を認めた。ほとんどの免疫関連有害事象のgradeは低く、grade 5は認めなかった。肺炎は5例(1.9%)で生じ、免疫関連心筋症やStevens-Johnson症候群の報告はなかった。免疫関連有害事象が起こった46例のうち、13例(28.3%)でステロイドが投与され、10例(21.7%)が治療中断となった。

 以上、Pembrolizumab単剤療法は2 line以上の治療で進行を認めた転移性胃腺癌/胃食道接合部腺癌に対して効果が高く、長期の奏効を与える新たな治療オプションとなる可能性が示された。


日本語要約原稿作成:東京慈恵会医科大学 消化器・肝臓内科 永田 祐介



監訳者コメント:
進行胃癌/進行胃食道接合部癌におけるPembrolizumabの有効性と安全性の検討

 KEYNOTE-059は3コホートで行われた第II相試験であり、今回紹介するのはコホート1の部分である。コホート1のこの試験は2レジメン以上の治療歴のある患者に対して進行を認めた転移性胃癌/胃食道接合部癌の患者に対するPembrolizumabの効果と安全性を明らかにする目的で行われた。奏効率は11.6%でありPFSの中央値は2.0ヵ月、OSの中央値は5.6ヵ月であった。安全性に関しては全gradeの治療関連有害事象は156例(60.2%)で認め、46例(17.8%)でgrade 3-5の治療関連有害事象を認めた。治療関連死は2例(0.8%)であり、全gradeの免疫関連有害事象は46例(17.8%)で認め、ほとんどの免疫関連有害事象のgradeは低く、grade 5は認めず、安全性に関しても示された。

 先に行われた消化器癌シンポジウムでの標準治療不応胃癌患者に対するNivolumabとプラセボとの比較試験(ATTRACTION-2)の結果(奏効率11.2%、PFS中央値1.61ヵ月、OS中央値5.32ヵ月)と本試験を比較してもほぼ同等の結果となっている。治療中止理由に関してもPD中止が双方で最も多く、毒性のプロファイルに関しても類似した結果となった。このことからも双方の使い分け等を含め、バイオマーカーによる治療の選択ができるようになることが今後の課題である。

 2018年のシカゴで行われたAACRの発表からNEJMにKEYNOTE-189(未治療の非扁平上皮非小細胞肺癌に対するプラチナ製剤+Pemetrexed±Pembrolizumab)の結果がpublishされ、殺細胞薬に対するPembrolizumabの上乗せ効果が証明された。サブグループ解析においてPD-L1の発現率にかかわらず、化学療法単独療法に比べ、全生存および無増悪生存期間を有意に延長するという結果となった。

 現在、胃癌の1st-lineにおけるPembrolizumabと殺細胞薬との併用療法のKEYNOTE-062試験が行われており、その結果が待たれるところである。

  •  1) Wagner AD, et al.: Cochrane Database Syst Rev. (3): CD004064, 2010 [PubMed]
  •  2) Lordick F, et al.: Ann Oncol. 28(8): 1767-1775, 2017 [PubMed]
  •  3) NCCN guidelines: gastric cancer (version 5.2017), 2017
  •  4) Smyth EC, et al.: Ann Oncol. 27(suppl 5): v38-v49, 2016 [PubMed]
  •  5) NCCN guidelines: esophageal and esophagogastric junction cancers (version 4.2107), 2017
  •  6) Cancer Genome Atlas Research Network: Nature. 513(7517): 202-209, 2014 [PubMed]
  •  7) Abdel-Rahman O: Crit Rev Oncol Hematol. 97: 65-71, 2016 [PubMed]
  •  8) Muro K, et al.: Lancet Oncol. 17(6): 717-726, 2016 [PubMed]

監訳・コメント:東京慈恵会医科大学 消化器・肝臓内科 澤田 亮一

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