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2009年1月〜2015年12月の論文紹介
2003年1月〜2008年12月の論文紹介

10月
監修:国立がん研究センター中央病院 消化管内科 医長 加藤 健

大腸癌

FRESCO試験:前治療歴のある転移性大腸癌に対するFruquintinibとプラセボの比較試験


Li J, et al.: JAMA. 319(24): 2486-2496, 2018

 転移性大腸癌の標準治療はFOLFOXもしくはFOLFIRIであるが、治療効果を高めるためVEGF経路を標的としたBevacizumab1,2)やAflibercept2)、EGFRを標的としたCetuximabやPanitumumabなどの分子標的薬が化学療法と併用されている3,4)。しかし、全身状態良好な患者に対しての3次治療の選択肢は限られている。

 VEGF経路は腫瘍の増殖に関連する新生血管形成に深くかかわっており5)、VEGF経路においてリガンドやレセプターを阻害する薬剤は、血管新生を阻害し腫瘍血管を退縮させ、腫瘍血管の正常化と抑制を促す5)

 アジアを含む国際共同試験において、VEGFR阻害剤であるRegorafenibは3次治療で転移性大腸癌患者の有意な生存期間延長を示し、VEGF経路を標的とした治療の効果は証明された6,7)。しかし、Regorafenibは肝毒性や疲労をはじめとした有害事象のマネジメントが問題となっている6)

 FRESCO試験は、3次治療以降の転移性大腸癌患者を対象に、VEGFR-1,2,3を標的とし高い選択性をもつキナーゼ阻害剤であるFruquintinibとプラセボを比較した二重盲検第III相試験である。

 主な対象は年齢18〜75歳、PS 0/1の2次治療施行後に病勢が進行した転移性大腸癌患者である。BevacizumabやAfliberceptなどのVEGF阻害剤や、CetuximabやPanitumumabなどのEGFR阻害剤の投与歴のある患者は許容されたが、SorafenibやRegorafenib、Ramucirumabといった他のVEGFR阻害剤の治療歴のある患者は除外された。

 対象患者は、Fruquintinib 5mgまたはプラセボを1日1回経口投与する群に2対1の割合で無作為に割り付けられ、VEGF阻害剤の投与歴、KRAS statusで層別化された。治療は1サイクル28日とし3週間内服、1週間休薬し、増悪または不耐となるまで継続された。

 OSでのHRを0.7と想定すると、OS中央値はFruquintinib群9.0ヵ月、プラセボ群6.3ヵ月となる。この想定に基づいて、検出力80%、両側有意水準5%として必要なイベント数を計算すると280イベントとなり、必要適格症例は約400例となる。

 主要評価項目はOS、副次評価項目はRR、ORR、DCR、奏効期間、安全性である。

 2014年12月8日〜2016年5月13日に中国の28施設で519例が登録され、うち適格患者416例が2対1の割合で、Fruquintinib群278例、プラセボ群138例に割り付けられた。観察期間中央値はFruquintinib群13.3ヵ月、プラセボ群13.2ヵ月であった。

 年齢中央値は54.6歳、女性が161例(38.7%)で404例(97.1%)が試験を完遂した。

 肝転移はFruquintinib群66.5%、プラセボ群73.9%であった。VEGF阻害剤の投与歴はFruquintinib群30.2%、プラセボ群29.7%、KRAS変異はFruquintinib群43.5%、プラセボ群46.4%で、ほぼ同等であった。

 後治療への移行率はFruquintinib群42.4%、プラセボ群50.7%であった。

 OS中央値はFruquintinib群9.30ヵ月(95% CI: 8.18-10.45)、プラセボ群6.57ヵ月(95% CI: 5.88-8.11)でHR=0.65(95% CI: 0.51-0.83、p<0.001)であり、Fruquintinib群が有意に優れていた。

 PFS中央値もFruquintinib群3.71ヵ月(95% CI: 3.65-4.63)、プラセボ群1.84ヵ月(95% CI: 1.81-1.84)でHR=0.26(95% CI: 0.21-0.34、p<0.001)であり、Fruquintinib群で有意に優れていた。

 サブグループ解析では、OSにおいては、女性(HR for death=0.85[95% CI: 0.57-1.29])、65歳以上(HR for death=0.95[95% CI: 0.55-1.63])、右側結腸(HR for death=0.96[95% CI: 0.53-1.75])などを除いたほぼすべてのサブグループでFruquintinib群が良好であった。VEGF阻害剤の投与歴の有無では投与歴のある症例において、死亡のHR=0.68(95% CI: 0.45-1.03)であり、投与歴のない症例におけるHR=0.60(95% CI: 0.45-0.80)と類似していた。PFSではすべてのサブグループでFruquintinib群が優れていた。

 RRはFruquintinib群4.7%、プラセボ群0%で、Fruquintinib群が有意に優れており(p=0.01)、Fruquintinib群でCRを1例、PRを12例認めた。DCRはFruquintinib群62.2%、プラセボ群12.3%で、Fruquintinib群が有意に優れていた(p<0.001)。

 奏効期間はデータカットオフ時点で、ほとんどの奏効例が病勢進行に至らず、治療継続中であり、中央値(5.6ヵ月)には未到達であった。

 治療期間の中央値はFruquintinib群3.7ヵ月(範囲0.1-21.9)、プラセボ群1.8ヵ月(範囲0.1-11.1)であった。RDIはFruquintinib群92%、プラセボ群98%であり、中央値では両群とも100%であった。

 安全性は、Fruquintinib群170例(61.2%)、プラセボ群27例(19.7%)でgrade 3以上の有害事象を認めた。重篤な有害事象は、Fruquintinib群43例(15.5%)、プラセボ群8例(5.8%)、入院または入院の延長を要する重篤な有害事象は、Fruquintinib群40例(14.4%)、プラセボ群7例(5.1%)に認めた。Fruquintinib群で頻度の高いgrade 3/4の治療関連有害事象は高血圧59例(21.2%)、手足皮膚反応30例(10.8%)、蛋白尿9例(3.2%)であった。Grade 3の肝毒性は両群とも1.5%以下であった。全体として11例(Fruquintinib群9例3.2%、プラセボ群2例1.5%)が致死的な有害事象を認め、Fruquintinib群では消化管出血、原因不明、肺感染症、肺真菌症、多臓器不全、突然死、細菌感染、脳梗塞、喀血、プラセボ群では肺塞栓症、ショックであった。

 全体で50例(Fruquintinib群42例15.1%、プラセボ群8例5.8%)が有害事象により治療を中止した。Fruquintinib群で最も頻度が高い中止理由は蛋白尿(6例2.2%)であった。有害事象のために治療の中断や減量を要したのはFruquintinib群131例(47.1%)、プラセボ群18例(13.1%)であった。高頻度で認められたFruquintinibの中断や減量の原因となった有害事象は、手足皮膚反応37例(13.3%)、蛋白尿27例(9.7%)、血小板減少15例(5.4%)であった。

 転移性大腸癌患者の3次治療以降において、Fruquintinibはプラセボと比較して統計学的にOSの延長を示した。中国ではVEGF阻害剤であるBevacizumabやAfliberceptは1次治療または2次治療では未承認である。本試験の結果が、治療の早期段階でVEGF阻害剤を使用する欧米においては外挿できない可能性があり、中国以外での地域での検討を要する。


日本語要約原稿作成:大阪医科大学 化学療法センター 由上 博喜



監訳者コメント:
Fruquintinibの中国以外の地域での展開に注目

 FRESCO試験は、中国発の経口VEGFR-1,2,3阻害剤であるFruquintinibとプラセボを比較した第III相試験で、3次治療以降での使用となった。

 Primary endpointのOS中央値はFruquintinib群9.30ヵ月対プラセボ群6.57ヵ月で、ハザード比0.65(95% CI: 0.51-0.83、p<0.001)とpositive(設定はHR=0.7)であった。奏効率4.7%でCRも1例で認めている。

 効果は良かったが、副作用には疑問が残った。Fruquintinib群のgrade 3以上の副作用発現率は61.2%、重篤な有害事象報告は15.5%、入院または入院の延長を要する重篤な有害事象は14.4%であるにもかかわらず、RDIは92%であった(Appendixには減量規定あり)。年齢中央値が54歳とやや若いことを鑑みても、本当にこの毒性でRDIが保てるのであろうか。他国で同様のデータが再現されれば、RegorafenibとT/Tの選択肢に割って入れるのであろう。現在米国で臨床試験中であり、その結果が注目される(NCT03251378)。

 とは言え、中国は本気で、さらに開発に力を注いでおり、中国国内で肺癌、胃癌でも第III相試験を行っている。今後の動向が楽しみである。

  •  1) Saltz LB, et al.: J Clin Oncol. 26(12): 2013-2019, 2008 [PubMed]
  •  2) Van Cutsem E, et al.: J Clin Oncol. 30(28): 3499-3506, 2012 [PubMed]
  •  3) Heinemann V, et al.: Lancet Oncol. 15(10): 1065-1075, 2014 [PubMed]
  •  4) Douillard JY, et al.: J Clin Oncol. 28(31): 4697-4705, 2010 [PubMed]
  •  5) Tampellini M, et al.: Expert Opin Investig Drugs. 25(5): 507-520, 2016 [PubMed]
  •  6) Grothey A, et al.: Lancet. 381(9863): 303-312, 2013 [PubMed]
  •  7) Li J, et al.: Lancet Oncol. 16(6): 619-629, 2015 [PubMed]

監訳・コメント:大阪医科大学 化学療法センター 寺澤 哲志

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