せん妄は脳の器質的異常によって生じる精神症状で、不安・抑うつとはまったく異なる病態である。入院が必要となるがんの終末期には、入院時で30%、死亡直前では90%と、ほとんどの患者さんが体験する症状といえる。
せん妄の原因は多岐にわたり、進行・終末期には3〜4つの原因が重なって起きていることも多いが、原因を取り除くことで軽快する場合もある。可逆性の高い原因としては、「高カルシウム血症」「オピオイドやステロイド、睡眠薬などの薬剤によるもの」「肺炎などの感染症」「脱水」などが挙げられる。
終末期のせん妄は、患者さん本人はもちろん、家族にも大きな精神的ストレスを与える。こうした可逆性の高い原因をチェックして適切に対応することで、患者さんにとっても家族にとっても、残された時間を少しでも有意義に過ごすことが可能になるかもしれない。