「痛みはないですか」という質問は、がん疼痛の有無を尋ねる上で欠かせないものであるが、実際に痛みがあっても「抗がん治療とは直接関係ない」という思いから、特に高齢者では痛みを訴えないことが多い。また、患者さん自身が痛みを自覚していないこともあるため、こうした直接的な問いかけだけでは、隠れたがんの痛みを拾い上げるには不十分である。
「日常生活で困っていることはありませんか」など、痛みとは直接関係のない質問を投げかけて会話を続けることで、本人が自覚していないがんの痛みや、痛みによる生活の支障が浮かび上がってくることが多い。特に、「重い」「こる」「だるい」「違和感がある」などは、がんの痛みの存在が疑われる重要なキーワードである。
がん疼痛はQOLを下げるだけでなく、不安・抑うつの危険因子でもある。抑うつを見逃さないためにも、日常生活に関する質問や間接的な言葉から、自覚されない“がんの痛み”を見きわめるようにしたい。