佐藤:進行胃癌の治療戦略の今後の展開についてはどうお考えですか。First lineだけでなく後治療の検討も重要だと思います。
坂本:進行胃癌に対するsecond lineとしてのLV/5-FU/L-OHP(FOLFOX)の有用性の検討をぜひ行っていただきたいですね。
瀧内:世界的にもCDDPからL-OHPへ移行する傾向がみられますね。
大村:私は、TS-1と併用する薬剤としてCDDPとTXL、CPT-11のいずれがベストであるのかを検証する試験が必要だと思います。
久保田: 現時点ではfirst lineが明確ではないので、JCOG9912でfirst lineが決定されたのちにsecond lineの研究を開始するという展開になりますね。
佐藤:ただ、second lineを何にするかの前に、second line自身の有用性が示されていないわけです。そうすると、first lineのみの群とsecond line施行群の比較を行う必要が生じてしまいますが、これについてはいかがお考えですか。
大村:しかし、すでに無治療と化学療法では化学療法施行群の予後が有意に優れるとのエビデンスがありますので、first lineがPDとなった症例をsecond lineで無治療群に割り付けることには問題がありますね。
瀧内:同感です。
佐藤:無治療 vs 化学療法のエビデンスはfirst lineについての試験しかなく、second line以後については直接検討されていないことも事実です。ただ、果たして今さらそこまで検討する必要があるのか、後治療開始からの生存期間が延長すればそれでよいのではないかとの考えもあります。一方、second lineからthird lineと進むに従って患者は選択されることになりバイアスがかかってしまい、臨床試験でそれを明確にするのはなかなか難しい。ちなみに、すでに次は分子標的治療薬の併用群と非併用群の比較検討を行うべきと言う研究者もいます。
坂本:忘れてならないのは、欧米における進行胃癌に対する標準的化学療法はLV/5-FUであることです。今後、日本でもきちんと検討する必要があるのではないでしょうか。
大村:そのとおりですね。今回の症例は幽門側切除術ができていますが、進行再発胃癌で経口摂取が不能となり、バイパス術を行ってもすぐに通過不能となる症例が多いので、静注化学療法の重要な選択肢としてのLV/5-FUの意義はいまだに大きいといえます。
佐藤:ところで、切除が可能な場合は、できるだけ切除したほうがよいのでしょうか。
久保田: バイパス術を施行せざるをえない症例は、もともと状態がよくないため、切除できるようであれば、バイパス術ではなく切除術を行うほうが予後は良好と考えられます。
佐藤:切除できなかった症例に対し、バイパス術で経口摂取を可能とし、TS-1/CDDP療法による腫瘍縮小後、治癒切除できた経験があるのですが。
大村:それはまれなケースでしょうね。私はバイパス術でのみ良好な予後が得られた経験はあまりありません。バイパス術を要する症例は、いずれは癌性腹膜炎をきたすことが多いですし。
佐藤:一方で、切除不能症例にTS-1を投与して奏効が得られた場合に、どの時点で投与を中止すべきか、またCR例に対する手術の是非なども問題です。
久保田: 化学療法でCRが達成された症例には、手術を行わないほうが予後は優れるようです。しかし、潰瘍などでPRと診断されてしまうCR例があり、今後の課題です。
佐藤:日本胃癌学会などで症例を集積して討論していただきたいですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。