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CASE8 進行大腸癌 2005年7月開催

CASE8 写真

ディスカッション 1

大腸癌転移では、まず切除を検討

大村:私は外科医の立場から、まず切除を考えます。多臓器転移でなく、肝、肺など単一の臓器への転移であれば、個数、場所にかかわらず、ほぼ手術の適応があると考えられます。肝への遠隔転移で最も予後がよいのは異時性かつ単発の場合で、同時性かつ多発の場合が最も予後不良です。しかし、大腸癌肝転移では肉眼的に見える腫瘍をできるだけ取り除いたほうが予後がよいことについては、既に多くの報告があります。ですから、CTAPで本当に転移巣が4個しかないのか確認した上で、切除可能かどうかを判断します。肝転移の存在診断についてはPETよりもCTAPのほうが信頼性が高いので、CTAPは必ず行います。小さい腫瘍にはマイクロ波凝固壊死療法(MCT)を用います。その後、十分回復した後に、補助化学療法としてFOLFIRI regimenを2〜3サイクル行います。前治療のTS-1が効かなかったということですので、LV/5-FUだけでは少し弱いと思い、CPT-11を併用します。

坂本:大村先生は、外科的に切除し、FOLFIRI regimenで補助化学療法を行うということですね。

佐藤:外科的切除の判断が内科医には難しいのですが、切除可能か否かはどうやって判断しますか。

大村:摘出術であれば、ほとんどの症例で手術可能です。Surgical marginを5mm程度とることができれば大丈夫です。この症例では、右葉にある4×4cmと3×3cmの転移巣だけに気をつければ、左葉の2つはMCTによる焼灼も可能です。手術としては、それほど大きくない、安全な手術です。

坂本:久保田先生は、いかがですか。

久保田:この症例はstage IIのS状結腸癌で、TS-1投与を半年間受けていながら7ヵ月目に再発しています。多発肝転移で、これほど短い経過をとる場合は同時性であると考えられますので、肝切除も考慮に入れながら、まずは化学療法を行います。First lineはFOLFIRI regimenで、腫瘍の縮小がみられたら腹腔鏡下に切除し、その後、焼灼します。

坂本:まずはFOLFIRI regimenによる化学療法を行い、responseがよく、腫瘍が縮小したら腹腔鏡下で切除し、さらに焼灼するということですね。化学療法は、FOLFIRIだけですか。

久保田:Responseがなければ、FOLFOX regimenに変更します。縮小した段階で、切除、焼灼します。

坂本:転移巣が肝両葉に4個ありますが、十分に手術の適応となるというご意見です。大腸癌での外科療法は、以前に比べて手術適応の幅が広がりましたね。膵癌などとは大きく違います。

大村:膵癌や食道癌からの肝転移であれば、外科的なアプローチは取りにくいでしょう。例えば食道癌の場合、肺への単発転移であれば切除しますが、肝転移は切除しません。まして、膵癌では手術は考えられません。一方、大腸癌の肝転移では、一度に十何個も切除するような手術も行います。

佐藤:胃癌の肝転移ではどうですか。

大村:ちょうどボーダーラインだと思います。異時性か同時性か、単発か多発かにより判断が分かれます。

久保田:異時性で単発であれば治癒が期待できますが、同時性で多発の場合は効果がほとんど期待できません。

大村:肝転移に関しては、大腸癌から転移した場合が最も切除の効果が高く、できる限り切除することで予後が改善すると報告されています。この症例と同じ状態でも、胃癌であれば、私も切除することは考えません。

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