坂本:久保田先生は、FOLFIRIが無効であればsecond lineはFOLFOXだとおっしゃいましたが、どの時点で変更されますか。
久保田:PDであれば、当然その時点で変更します。問題は、SDが続いたときです。
坂本:RECIST基準でPDとなった場合ですね。
瀧内:SDが続いていたら、私もおそらく明らかなPDになるまでfirst line therapyを続けます。膵癌や胃癌とは異なり、大腸癌はそこまで待っても十分に薬剤を使い切れる癌種だと思います。
久保田:重要なのは、LV/5-FU、CPT-11、L-OHPの3剤を使い切った症例では著明にMSTが延長されたということです。
瀧内:「Big Oncologistに聞く」に登場しているDr. Grotheyと先日話しましたが、現在ではその3剤にbevacizumabとcetuximabを加えた5剤を使い切ることが、最もOS延長に寄与するということでした。
坂本:5剤を使い切ると、MSTはどれくらいですか。
瀧内:5剤ではわかりませんが、3剤+bevacizumabの4剤で25.1ヵ月ということでした(ASCO 2004 #3517)。
大村:3剤では21.4ヵ月と報告されていますから(Journal of Clinical Oncology 2004; 22: 1209)、bevacizumabの上乗せ効果で4ヵ月弱延長されています。
瀧内:しかし、実際に5剤すべてを使うためには、例えばFOLFOX+bevacizumabを10ヵ月投与すると1,000万円近くかかるという大きな問題があります。Cetuximabもかなり高額ですし、今後日本においても、医療経済的なことが大きな問題となってくるでしょう。
大村:この症例は65歳とお若いですね。現在は女性の平均寿命は86歳ですから。Survivalの延長とともに、どのように生きてくださるのかを考慮する必要があります。
坂本:今後、高齢の患者さんは間違いなく増加しますので、高齢者に対する治療は重要です。先ほどからCPT-11を用いるというご意見が多く出ましたが、日本ではCPT-11の評価があまり高くない印象がありますね。なぜでしょうか。
瀧内:L-OHPのほうが使いやすいからだと思います。FOLFOX regimenも、実際経験してみてFOLFIRI regimenに比べて使いやすい印象があります。
佐藤:L-OHPが、承認からわずか数ヵ月で3,000例近くに投与された背景も、やはり使いやすさからでしょうか。
瀧内:そうですね。今後、神経毒性の問題が、これから徐々に出てくると思います。
大村:Portの挿入に関して問題はありますか。
佐藤:われわれの施設では末梢静脈から投与する患者さんが多いですが、port留置も以前から使っている手技ですし、全く問題はありません。
大村:末梢に設置すると、投薬は1日だけですか。
佐藤:5-FUの持続静注が2日間ですので、入院になります。
久保田:DPCは導入されていますか。
瀧内:当院では入院患者さんに対してDPCが導入されてはいます。できるだけ外来治療で行う方向にはありますが、現状はportを挿入する患者さんと挿入しない患者さんとで半々という感じでしょうか。
大村:DPCを導入している場合には、患者さん宅の近くの訪問看護ステーションや、紹介医に抜針を依頼するのも1つの方法だと思います。
佐藤:国立がんセンターでは、抜針は患者さんが行っているそうです。
大村:今後、われわれも自己抜針を検討したいと思いますが、近医に抜針を依頼することにより定期的に近医でフォローアップをしていただけることも、1つのメリットだと考えています。
坂本:ここまでさまざまなご意見をいただきましたが、本症例のような典型的な進行大腸癌に対する治療の検討は、以前なら全身化学療法の選択からスタートしていたと思います。治療の進歩によって化学療法も増え、またこのような症例でも手術が選択できるようになったのですね。本日はありがとうございました。