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第3回 大腸癌のバイオマーカー

 近年、大腸癌の領域では分子標的治療薬をはじめとした新薬の開発ならびに個別化医療を目的としたバイオマーカーの探索が積極的に行われている。本邦では2008年にCPT-11の副作用高発現群の選別を目的としたUGT1A1 遺伝子多型検査が、2010年に抗EGFR抗体薬無効例の選別を目的としたKRAS 遺伝子検査が保険償還され実地臨床で広く行われている。また、2015年4月には従来のKRAS 検査からRAS 遺伝子検査へと移行することになった。新しいエビデンスに基づいてバイオマーカーが最適化された事例と言える。これら以外にも期待されているバイオマーカーは多数存在するが、単施設、少数例、単アーム、後ろ向きの探索的研究からの報告で十分な検証が行われていないため、その有用性については明確な結論が得られていない。
 本邦の基礎研究レベルの高さは世界に誇れるものである。基礎研究から得られたバイオマーカー候補を実地臨床で使用できるようにするためには、探索的研究→検証試験といったステップ、トランスレーショナルリサーチ (TR) が必要である。一方で、臨床側が求めているバイオマーカーについて基礎研究者に提案するリバースTRも重要である。そのためにも検体の保存や使用など倫理面も含めたシステムの構築を、基礎臨床が一体となって進める必要がある。
 本稿では、大腸癌化学療法の分子生物学的バイオマーカーの現状について、第III相比較試験の付随研究から得られている知見を中心に概説した。

2011年5月16日掲載
2015年5月15日改訂

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