1980年代後半から癌の浸潤・転移・増殖に関わる重要な分子が次々と明らかになった。1990年代に入り、この流れは急激に加速し、1990年代後半には特定分子の働きを阻害する癌分子標的薬の臨床開発が始まった。21世紀に入ると、化学療法は癌分子標的薬による個別化治療へとパラダイムシフトした。この背景には、工学・理学の発展を土台にした分子生物学的解析技術の進歩により、癌生命現象の責任分子の同定が進んだこと、さらには工学・化学の進歩によりその責任分子を標的とする創薬・製薬技術が進歩したことがある。本稿では、現在までの大腸癌に対する癌分子標的薬開発の歴史を概説する。また、臨床開発が終了した薬剤や、いわゆるnegative studyにも光を当て、今後の治療開発の一助となるようにその原因を考察したい。
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