CPT-11+Cetuximab
*1サイクルの1日目のみ、Cetuximabの用量・投与時間を400mg/m2、120分とする。 |
*1サイクルの1日目のみ、Cetuximabの用量・投与時間を400mg/m2、120分とする。 |
国内第II相臨床試験、EMR62202-049/CA225-259 |
Cetuximabは、上皮成長因子受容体 (EGFR) を標的とした分子標的薬である。分子量約151,800のIgG1サブクラスのヒト/マウスキメラ型モノクローナル抗体で、米国California大学San Diego校にて開発された。リガンドのEGFRへの結合をブロックすることでEGFRを介したシグナル伝達を阻害し、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。現在、大腸癌、頭頸部癌などに対する有用性が確認されている。
※近年、がん組織のKRAS 遺伝子変異とCetuximabの有効性に密接な相関があることが相次いで報告された。RAS の活性化は、EGFRの活性化から始まる細胞内シグナル伝達の下流に位置する反応である。RAS の恒常的な活性化を伴うKRAS 遺伝子変異例(mutant)では、Cetuximabの有効性が期待できないことが明らかになった。そのため、CetuximabはKRAS 遺伝子に変異がない野生型(wild-type)に対する投与が推奨されている。
■有効性
◆BOND試験
CPT-11抵抗性でEGFRが陽性である、転移を有する大腸癌患者329例を対象とした無作為化第II相試験(BOND試験)が行われた。その結果、Cetuximab+CPT-11 vs.Cetuximab単剤において、RRは各々22.9%と10.8%(p<0.0074)、PFSの中央値は4.1ヵ月と1.5ヵ月(p<0.001, HR: 0.54)であり、CPT-11併用の優位性が証明された。なお、MSTは8.6ヵ月vs.6.9ヵ月(p<0.48, HR: 0.91)であり、両群間に有意差は認められなかった1)。
◆EPIC試験
L-OHP耐性である転移を有する大腸癌患者に対するCPT-11+Cetuximab vs.CPT-11単剤を比較したオープンラベル第III相試験(EPIC試験)が行われた。その結果、RRは各々16.4%と4.2%(p<0.0001)、PFSの中央値は4.0ヵ月と2.6ヵ月(HR: 0.692, p<0.0001)であり、Cetuximabの有意な上乗せ効果が認められた2)。
一方、一次エンドポイントであったOSについては、中央値が各々10.7ヵ月と10.0ヵ月(HR: 0.975, p=0.71)であり、有意差は認められなかった。これは試験終了後、後治療としてCPT-11単剤群の46.9%にCetuximabが投与されたことによるものと推測された2)。その結果、二次治療以降におけるCetuximabは「二次治療の最初からCPT-11と併用」でも、あるいは「二次治療failure後に三次治療としてCPT-11と併用」のどちらでもよいと解釈されることとなった。
同試験のレトロスペクティブな追加解析(KRAS status別)は下表に示す通りである3, 4)。
KRAS 野生型(n=192) | KRAS 変異型(n=108) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
Cetuximab +CPT-11 (n=97) |
CPT-11 (n=95) |
HR (95% CI) |
Cetuximab +CPT-11 (n=49) |
CPT-11 (n=59) |
HR (95% CI) |
|
奏効率 | 10.3% | 7.4% | - | 12.2% | - | - |
OS中央値 (月) |
10.94 | 11.56 | 1.28 (0.89-1.85) p=0.1755 |
8.41 | 10.68 | 1.28 (0.81-2.01) p=0.2874 |
PFS中央値 (月) |
3.98 | 2.79 | 0.77 (0.57-1.04) p=0.0954 |
2.60 | 2.69 | 1.00 (0.67-1.49) p=0.9853 |
■安全性
EPIC試験におけるGrade 3/4の有害事象は下表の通りである2)。最も多くみられたのは好中球数減少と下痢であり、いずれもCetuximab+CPT-11群に多かった。重篤な好中球数減少はCetuximab+CPT-11群で8.3%、CPT-11群では6.4%であった。Grade 3/4のinfusion reactionはそれぞれ1.4%、0.8%であった。
Reference
凡例
- OS: overall survival, 全生存期間
- PFS: progression-free survival, 病勢進行までの期間
- MST: median survival time, 生存期間中央値
- HR: hazard ratio, ハザード比
- RR: response rate, 奏効率
- CPT-11: イリノテカン塩酸塩水和物
- 95% CI: 95% confidence interval, 95%信頼区間
- 副作用対策講座「皮膚障害-1 分子標的薬の皮膚障害」
- 副作用対策講座「悪心・嘔吐」
- 副作用対策講座「下痢」
GI cancer-net
消化器癌治療の広場