レジメン講座 | 抗癌剤併用レジメンの投与法を解説します。

SIRB

*S-1の用量は体表面積(m2)により調整
<1.25=40mg×2; 1.25−<1.50=50mg×2; ≧1.50=60mg×2

Yamada Y, et al.: Invest New Drugs. 30(4): 1690-1696, 2012
Komatsu Y, et al.: ESMO 2017 #474O

SIRBは、国立がん研究センター中央病院で開発されたIrinotecan(CPT-11)、Bevacizumab(BV)をday 1に、S-1をday 1-14に投与する3週間1サイクルの治療法であり、第II相試験において有望な有効性と安全性が示された。TRICOLORE試験(第III相試験)において、4週投与法のIRIS+BVとともに、切除不能大腸癌に対する1次治療としてのmFOLFOX6/CapeOX+BV療法に対する非劣性が検証された。

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◆SIRB第II相試験

切除不能大腸癌患者に対する1次治療におけるSIRBの第II相試験では、奏効割合67%、PFS中央値12.3ヵ月であり、有望な有効性を示した。また、grade 3以上の有害事象は、好中球減少26%、下痢8%、悪心6%であり、忍容性は良好であった。

◆TRICOLORE試験

切除不能大腸癌患者に対する1次治療として、mFOLFOX6/CapeOX+BV群(n=244)に対するS-1+CPT-11+BV群(SIRB、IRIS+BV)(n=243)の非劣性を検証した第III相試験である。

■有効性

観察期間中央値は32.4ヵ月であった。主要評価項目であるPFSの中央値は、mFOLFOX6/CapeOX+BV群10.8ヵ月、S-1+CPT-11+BV群14.0ヵ月であり(HR 0.84, 95% CI: 0.70-1.02、pnon-inferiority<0.001)、S-1+CPT-11+BV併用療法の非劣性が検証された。非劣性が検証された場合、優越性を検証するデザインとなっていたが、psuperiority=0.082であり、S-1+CPT-11+BV群で良好な傾向であったものの優越性を示すことはできなかった。
なお、レジメンごとのPFS中央値はそれぞれ、mFOLFOX6+BV群11.4ヵ月、CapeOX+BV群10.4ヵ月、SIRB群13.2ヵ月、IRIS+BV群14.3ヵ月であった。
副次的評価項目(mFOLFOX6/CapeOX+BV群/S-1+CPT-11+BV群)は、TTFは中央値7.7/9.6ヵ月(HR 0.71, 95% CI: 0.59-0.85, p=0.0002)であり、S-1+CPT-11+BVで有意に良好であったが、OSは中央値33.6/34.9ヵ月(HR 0.86, 95% CI: 0.66-1.13, p=0.28)、奏効割合は71/66%(p=0.34)であり有意差は認めなかった。

  mFOLFOX6/CapeOX+BV
(n=243)
S-1+CPT-11+BV
(n=241)
HR
(95% CI)
P値
PFS 10.8ヵ月 14.0ヵ月 0.84
(0.70-1.02)
<0.001
OS 33.6ヵ月 34.9ヵ月 0.86
(0.66-1.13)
0.28
奏効割合 71% 66% 0.34

■安全性

Grade 3以上の有害事象(mFOLFOX6/CapeOX+BV群/S-1+CPT-11+BV群)は、好中球減少(14/24%)、発熱性好中球減少症(0/3%)、下痢(7/13%)、血栓塞栓症(1/4%)が有意にS-1+CPT-11+BV群で高頻度であった。一方、手足皮膚症候群(6/1%)、末梢性感覚ニューロパチー(22/0%)、麻痺性イレウス(3/0%)はmFOLFOX6/CapeOX+BV群で有意に高頻度であった。
神経毒性についてのQOLは、mFOLFOX6/CapeOX+BV群は経時的に低下したが、S-1+CPT-11+BV群はほとんど変化がなく、有意に良好であった(p<0.0001)。

以上の結果から、切除不能大腸癌の1次治療において、S-1+CPT-11+BV併用療法(SIRB、IRIS+BV)は標準治療の1つとして確立された。

レジメン解説執筆:愛知県がんセンター中央病院 薬物療法部 加藤 恭子 先生/舛石 俊樹 先生

References

  • 1)Yamada Y, et al.: Invest New Drugs. 30(4): 1690-1696, 2012[PubMed
  • 2)Komatsu Y, et al.: ESMO 2017 #474O[学会レポート
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