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2月
監修:静岡県立静岡がんセンター 大腸外科 部長 絹笠 祐介

大腸癌

切除後stage II/III結腸癌に対するFOLFOX4/XELOXの投与期間(TOSCA試験)


Lonardi S, et al.: Ann Oncol. 27(11): 2074-2081, 2016

 Stage II/III結腸癌患者に対する術後補助化学療法としてのFOLFOXまたはXELOXは6ヵ月投与が標準だが1,2)、Oxaliplatin(L-OHP)ベースレジメンでは神経障害が投与制限因子となる。術後補助化学療法の至適期間に関する試験は少なく、最初に5-FUの有効性を認めた試験では12ヵ月投与だったが3)、その後の大規模比較試験で6ヵ月投与が12ヵ月投与と同程度の有効性を認めた4)。また、bolus 5-FU/LVの6ヵ月投与とinfusion 5-FUの3ヵ月投与の比較試験では、有効性は同程度であり、毒性はinfusion 5-FUの3ヵ月投与で有意に低いことが示されている5)。そこで、根治切除されたstage II/III結腸癌患者に対する術後補助化学療法として、FOLFOX4/XELOXの3ヵ月投与と6ヵ月投与を比較する、多施設共同のオープンラベル非劣性第III相試験、TOSCA試験が行われた。

 対象は、18歳超、ECOG PS 0/1で、組織学的にstage IIIまたは高リスクstage IIと診断された結腸癌患者であった。

 対象患者は、施設、stageにより層別化され、術後3〜10週の間に、FOLFOX4/XELOXを3ヵ月投与する群(3m群)と、6ヵ月投与する群(6m群)に1:1で無作為化された。

 主要評価項目はRFS(relapse-free survival)、副次評価項目はOS、安全性であった。非劣性マージンは1.2であり、片側α=0.025、検出力80%で、944イベントを観察するために、stage IIおよびIIIの割合に応じて2,860〜4,100例の無作為化が見込まれた。

 2007年6月〜2013年3月の間に、イタリアの130施設から3,759例が参加し、重大なプロトコール違反による44例を除いた3,715例が、3m群1,848例、6m群1,867例に無作為化された(ITT集団)。治療の割合は、FOLFOX4が64%、XELOXが36%であった。ITT集団における両群の患者背景および腫瘍特性はバランスが取れており、stage IIIは両群ともに65.3%、N stage 2/3は3m群18.1%、6m群17.1%であった。また、手術から治療開始までの期間中央値は7週間(四分位範囲6-8)であり、97%の症例が10週間以内に治療を開始した。

 不完全なデータであった18例を除いた3,697例(コンプライアンス集団)におけるFOLFOX4とXELOXの治療完遂率は同程度であった。両群の治療完遂率は、3m群88.2%、6m群66.3%、フッ化ピリミジン系製剤およびL-OHPを遅延または用量調節なしに完遂した症例はそれぞれ34.9%、12.1%であり、遅延または用量調節して完遂した症例は52.2%、44.4%であった。治療中止率は3m群8.2%、6m群32.5%であり、治療中止の理由は、毒性または有害事象が3m群6%、6m群20%であった(p<0.001)。6m群の89%は3ヵ月以上の治療を受けており、これは3m群の治療完遂率と同程度であった。また、6m群の81%はFOLFOX4を10サイクル以上、またはXELOXを6サイクル以上投与されており、総投与量中央値は期待値と同程度であった。注目すべきことに、プロトコールに従ってフッ化ピリミジン系製剤を継続しながらL-OHPを中止した症例は、3m群1%、6m群10%のみであった。

 安全性の解析は1回以上の投与を受けた3,654例で行われ、grade 3以上の全有害事象は、3m群31%、6m群46%であり(p<0.001)、好中球減少はそれぞれ20.7%、27.6%(p<0.0001)、下痢は5.0%、6.4%(p<0.0001)、アレルギー反応は0.5%、2.0%であった(p<0.0001)。また、神経毒性は、grade 2が3m群7.5%、6m群22.8%、grade 3がそれぞれ1.1%、8.2%、grade 4がともに<1%であり、6m群で高率であった(p<0.0001)。なお、FOLFOX4とXELOXの比較では、FOLFOX4で好中球減少が多く、XELOXで下痢が多くみられた。

 以上のように、根治切除されたstage II/III結腸癌患者に対する術後補助化学療法として、FOLFOX4/XELOXの3ヵ月投与と6ヵ月投与の安全性解析では、6ヵ月投与に比べて3ヵ月投与で治療コンプライアンス、安全性が良好であった。有効性の評価項目に関する解析は現在進行中であり、結腸癌術後補助化学療法の至適期間を評価する統合解析プロジェクトIDEAのデータが揃うことにより、術後補助化学療法の効果の持続、生存と毒性のバランスなどが確認できると考えられる。



監訳者コメント:
結腸癌に対する術後補助化学療法の至適期間を検証する第III相試験

 結腸癌に対する術後補助化学療法の投与期間は現在6ヵ月とされているが、近年はSAFFA試験5)など、投与期間の短縮化を試みる検討がなされている。SAFFA試験では、5-FU/LVの6ヵ月投与群に対するinfusion 5-FUの3ヵ月投与群の優越性が検討され、5年RFSおよび5年OSにおいて、infusion 5-FUの3ヵ月投与群でより良好である傾向が示唆され、同時に有害事象の発現率も有意に低いことが示された。

 TOSCA試験は、高リスクstage II/ IIIの結腸癌に対する術後補助化学療法として、FOLFOX4またはXELOXの6ヵ月投与群に対する3ヵ月投与群の非劣性を検証する第III相臨床試験であり、今回は治療コンプライアンスと安全性の結果が報告された。治療コンプライアンスは6ヵ月投与群に対して3ヵ月投与群で良好であり、安全性では6ヵ月投与群に対して3ヵ月投与群は、白血球減少、発熱性好中球減少症、発熱を伴わない好中球減少、血小板減少、下痢悪心、無力症、神経毒性、アレルギー反応の発現率が有意に低かった。なお、有効性は早期のものであり、5年RFSや5年OSなどの主要評価項目の解析が現在進行中である。

 術後補助化学療法の有効性が保持できるのであれば、投与期間を短くすることで患者や医療従事者に与えられるメリット、医療経済に対するメリットは測り知れず、結果が期待される。

  • 1) Labianca R, et al.: Ann Oncol. Suppl6: vi64-72, 2013[PubMed
  • 2) NCCN: NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology: Colon Cancer. V.2 2016
  • 3) Lancet. 345(8955): 939-944, 1995[PubMed
  • 4) O’Connell MJ, et al.: J Clin Oncol. 16(1): 295-300, 1998[PubMed
  • 5) Chau I, et al.: Ann Oncol. 16(4): 549-557, 2005[PubMed

監訳・コメント:静岡県立静岡がんセンター 大腸外科 副医長 山川 雄士

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