ケースカンファレンス〜トップオンコロジストはこう考える〜

監修中島 貴子 先生聖マリアンナ医科大学
臨床腫瘍学

日常診療で遭遇する症例を取りあげ、トップオンコロジストが治療方針を議論するケースカンファレンスをお届けします。

CASE1

2017年6月開催

経口摂取不良の切除不能胃癌に対する
治療戦略

  • 設樂 紘平 先生設樂 紘平 先生
    国立がん研究センター
    東病院
    消化管内科
  • 沖 英次 先生沖 英次 先生
    九州大学大学院
    消化器・総合外科
  • 山ア 健太郎 先生山ア 健太郎 先生
    静岡県立
    静岡がんセンター
    消化器内科
  • 結城 敏志 先生結城 敏志 先生
    北海道大学大学院
    医学研究科内科学講座
    消化器内科学分野

症例プロファイルProfile

患者 38歳、男性
既往歴 高血圧、肛門ポリープ
主訴 経口摂取不良
家族歴 特になし

現病歴

2週間前より経口摂取不良、腹満感があり、近医を受診。上部消化管内視鏡検査で胃癌と診断され、貧血を認めた。1週間にわたって赤血球濃厚液(RCC)を計12単位輸血し、精査・加療目的で当院を紹介された。

初診時現症

  • 身長167 cm、体重77 kg
  • PS 1
  • 体温 37.1℃
  • 血圧 128/81 mmHg
  • 脈拍 110回/分
  • SpO2 98%
  • 特記すべき身体所見なし

検査所見

【血液一般検査】

WBC 10,000/μL
NEUTRO 83.2×102/μL
Hb 6.6 g/dL
Plt 33.3×104/μL

【血液凝固検査】

PT 12.5 sec
INR 1.10
APTT 27.1 sec

【血液生化学的検査】

T-Bil 0.37 mg/dL
D-Bil 0.37 mg/dL
TP 5.7 g/dL
アルブミン 3.2 g/dL
UN 27.7 mg/dL
クレアチニン 0.67 mg/dL
Na 135 mEq/dL
K 3.8 mEq/dL
Cl 100 mEq/dL
AST 22 U/L
ALT 20 U/L
ALP 172 U/L
γ-GTP 11 U/L
LD 229 U/L
Glu 125 g/dL
CRP 10.19 mg/dL
CEA 2.2 ng/mL
CA19/9 132 IU/mL

【上部消化管内視鏡検査】

  • 幽門前庭部に全周性のType3病変(SS以深)
  • 胃内に多量の黒色残渣
  • 大弯側の粘膜下浸潤傾向が強く、スコープは通過不可能。造影での狭窄長は2〜3cm

【腹部CT検査】

  • 胃前庭部の壁肥厚を認める。
  • 多発リンパ節転移(左鎖骨上〜傍大動脈)を認める。
  • 腹水貯留を認める。

【病理組織学的検査】

  • Adenocarcinoma、tub2
  • 中分化管状腺癌を認め、腺管構造の形成に乏しい成分も含まれる。
  • HER2 score 0

治療経過

  • 入院後、3日目より1st-lineとしてFOLFOXを施行した。2コース実施後に経口摂取可能となり退院し外来通院で治療を継続した。3サイクル後に潰瘍の縮小、狭窄の改善、リンパ節縮小、腹水消失が認められた。
  • FOLFOX 10サイクル施行後に多発リンパ節転移の増大、腹水の増加を認めた。PSは0、経口摂取は維持できていた。
  • 2nd-lineとしてRamucirumab+PTX療法を開始したところ、2サイクル後にリンパ節転移の縮小、腹水の減少を認めた。
  • しかし5サイクル後に、胃原発巣からの出血に伴う貧血で緊急入院となった。

論点

  • 1st-lineとしてどのような治療を選択するか?
  • 2nd-lineに移行すべきか?移行する場合はどのレジメンを選択するか?
  • 胃原発巣からの出血に対してどのように対応するか?
このページのトップへ
MEDICAL SCIENCE PUBLICATIONS, Inc
Copyright © MEDICAL SCIENCE PUBLICATIONS, Inc. All Rights Reserved

GI cancer-net
消化器癌治療の広場