ケースカンファレンス〜トップオンコロジストはこう考える〜
監修中島 貴子 先生聖マリアンナ医科大学
臨床腫瘍学
日常診療で遭遇する症例を取りあげ、トップオンコロジストが治療方針を議論するケースカンファレンスをお届けします。
CASE4
2017年8月開催
RAS遺伝子変異型、局所進行、S状結腸癌
に対する治療戦略
- 砂川 優 先生
聖マリアンナ医科大学
臨床腫瘍学 - 谷口 浩也 先生
愛知県がんセンター
中央病院 薬物療法部
- 佐藤 武郎 先生
北里大学医学部
下部消化管外科 - 工藤 敏啓 先生
大阪大学大学院
医学系研究科 先進癌薬物療法開発学寄附講座
症例プロファイルProfile
患者 | 50歳、男性 |
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既往歴 | なし |
主訴 | 血便、腹痛 |
家族歴 | なし |
現病歴
1週間前から血便を認めていた。腹の張りを自覚し腹痛が出現したため近医を受診。レントゲン検査にてイレウスを疑われ、すぐに精査加療が必要と判断され近隣の病院へ紹介された。
CT検査でS状結腸に約8 cmの腫瘤を認めサブイレウスの診断となり、緊急ストマ造設術を施行した。
術後の状態
- PS 0
- 身長172 cm、体重61 kg
- 体温 36.4℃
- 血圧 132/84 mmHg
- 脈拍 82回/分
検査所見
【血液一般検査】
WBC | 9,400/μL |
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Hb | 9.1 g/dL |
GOT | 51 U/L |
GPT | 68 U/L |
Cre | 0.73 mg/dL |
CRP | 4.57 mg/dL |
【その他の検査】
CEA | 0.5 ng/mL |
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CA19-9 | 11.6 ng/mL |
高分化型管状腺癌(tub1)、RAS遺伝子変異あり | |
UGT1A1遺伝子多型:*28/*6(ダブルヘテロ) |
【検査所見と臨床診断のまとめ】
- ■ CT検査でS状結腸に約8 cmの腫瘤を認め遠隔転移はなし
- ■ 膀胱鏡検査:粘膜は異常所見なし
- ■ 尿検査:異常なし
- 診断:
- ■ S状結腸癌(局所進行性)
- ■ cT3-4aN1M0, cStage IIIa?
- 高分化型管状腺癌(tub1)、RAS遺伝子変異あり
- UGT1A1遺伝子多型:*28/*6 (ダブルヘテロ)
治療経過
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XELOX+Bevacizumabで治療開始 |
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治療開始から9週(3コース)経過後CT所見で原発巣縮小を確認(PR) |
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治療開始から19週(6コース)経過後CT所見で原発巣は縮小継続しているが 多発肝転移が出現 |
論点
- 局所進行性大腸癌の1st-lineとしてどの化学療法レジメンを選択するか?
- 原発巣の部位(左側/右側、結腸/直腸)でレジメンは使い分けるか?
- 2nd-lineにおける血管新生阻害薬をどのように使い分けるか?
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