ケースカンファレンス〜トップオンコロジストはこう考える〜

監修中島 貴子 先生聖マリアンナ医科大学
臨床腫瘍学

日常診療で遭遇する症例を取りあげ、トップオンコロジストが治療方針を議論するケースカンファレンスをお届けします。

CASE6

2017年10月開催

PS不良の大腸癌多発肝転移例
に対する治療戦略

  • 牧山 明資 先生牧山 明資 先生
    JCHO 九州病院
    血液・腫瘍内科
  • 加藤 健 先生加藤 健 先生
    国立がん研究センター
    中央病院 消化管内科
  • 小 雅人 先生小 雅人 先生
    医療法人薫風会 佐野病院
    消化器がんセンター
  • 坂井 大介 先生坂井 大介 先生
    大阪大学大学院
    医学系研究科 先進癌薬物療法開発学寄附講座

まとめ:トップオンコロジストはこう考える

牧山先生

牧山先生
盲腸癌多発肝転移でイレウスが疑われる症例に対して、原発巣切除を先行させたが、切除17日後に多発肝転移巣が増悪したため、FOLFOXで治療を開始し、RAS野生型と判明した段階で抗EGFR抗体を追加した。残念ながら治療効果を認めず早期に増悪した。2例目についてはS状結腸癌多発肝転移で黄疸を認める症例に対し、同様にFOLFOXに抗EGFR抗体を併用して治療を実施し、長期間の腫瘍制御が得られた症例を経験した。


加藤先生

加藤先生
イレウスは入院下で管理可能であり、多発肝転移が一気に増悪するリスクを抑えるために化学療法を優先する。この症例では切除を優先して多発肝転移巣が増悪したが、その場合ワンチャンスと考えてRAS野生型不明だがFOLFOX+抗EGFR抗体を選択したい。Irinotecanが使用できるのであればFOLFOXIRIも検討する。2例目については、黄疸が進行していても若年で体力があれば減量の必要はないが、PS 2ならばOxaliplatinは相対用量強度80%で開始。RAS野生型であれば抗EGFR抗体を併用したい。


小先生

小先生
盲腸原発巣でイレウスが懸念されるため、原発巣に対する治療を優先し、その後に化学療法を検討する。盲腸癌切除、肝転移巣増悪後の化学療法は黄疸があることからFOLFOXを選択し、RAS遺伝子検査の結果を待って分子標的薬を追加する。Bevacizumabを使用するのであれば術後4週間を待って追加する。2例目のように黄疸が進行し、PS 2、RAS野生型の左側病変例には抗EGFR抗体単剤も選択肢になる。化学療法を減量する総ビリルビン値の目安は5 mg/dLである。


坂井先生

坂井先生
外科で盲腸原発巣を切除してくれるならば、その後の管理は容易になる。術後すぐの化学療法は少なくとも2剤併用療法とし、RAS野生型であることが判明したら抗EGFR抗体を、または術後1ヵ月半が経過した時点でBevacizumabを併用する。2例目の黄疸が進行したRAS野生型の左側病変例では抗EGFR抗体製剤を使用し、化学療法では肝代謝を受けないOxaliplatinを選択してFOLFOXを行う。総ビリルビン値が3〜5 mg/dLを超えたら5-FUは減量するが、Oxaliplatinは減量の必要はない。


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