WEBカンファレンス | 臨床の場で遭遇しうる架空の症例に対して、それぞれの先生方に治療方針をご提示いただき、日常診療における治療方針の選択にあたっての問題点等を議論していただいています。

CASE 18 Bevacizumab投与中の進行・再発大腸癌 2009年4月開催

CASE18 写真

ディスカッション 2

血圧の上昇に対しては、どの時点で、どのように対応するか

大村: 本症例では、血圧の上昇が問題となります。先生方は、どの時点でどのような対処をされますか。

瀧内: 本症例では、血圧、蛋白尿、Dダイマーの上昇など、糖尿病患者にbevを投与する際に注意すべき点が、すべて悪化傾向にあります。
まず、3サイクル目ですでに血圧が142/88mmHgとなり、蛋白尿も(2+)となっていることから、私はこの時点でARBもしくはACE阻害薬を導入して血圧をコントロールします。それによって蛋白尿の減少も期待したいところです。
さらに、4サイクル目でも蛋白尿(2+)となり、(2+)が2回続いたことから、この時点で1日尿蛋白量を測定し、bev継続投与の可否を判断する必要があると思います。ただし、4サイクル終了時の評価では、mFOLFOX6+bevによる腫瘍縮小が確認されていますので、やはりbevは継続したいですね。

佐藤: 血圧に関しては、2サイクル目ですでに138/88mmHgになっているので、この辺りから腎機能障害の進展抑制を期待して、ACE阻害薬、またはARBの投与を考えます。
また、本症例では、3サイクル目には尿蛋白が(2+)となっていますので、この時点で1日尿蛋白量を測定し、bevの継続投与を検討するという選択もあると思います。その結果、1gを下回っていればbevを継続投与、下回っていなければ尿蛋白がGrade1に戻るまで休薬するという選択肢もあったと思います。

大村: 佐藤先生は、血圧に対しては、2サイクル目の138/88mmHgとなった時点でARBの投与を開始されるのですか。

佐藤: いえ、この時点ではまだ投与開始を検討する段階です。1回の血圧測定では、検査値にどれくらいの信憑性があるかはわかりませんので。3サイクル目で142/88mmHgとなった時点では、もう投与を開始していると思います。ARBは、ACE阻害薬と比べて副作用が少なく使いやすいので、このような症例にはARBを使用することが多いですね。

坂本: 私はCASE-Jという高血圧治療薬の大規模臨床試験に関わっていましたが、本試験においても、ARBは副作用が少なく、有効であることが示されています3)。VEGF阻害剤であるbevを使用する場合、副作用として高血圧が発現することが想定されますので、収縮期血圧が、1サイクル目の126mmHgから2サイクル目に138mmHgに上昇した段階で、腎保護作用があり、糖尿病患者にも有効3)と報告されているARBを投与したいですね。

大村: 2-3サイクル目にARBを投与することには異論がないと思いますが、それでも血圧コントロールが不十分であればどうしますか。

瀧内: 1剤で不十分なら、例えば2剤目はACE阻害薬、3剤目はカルシウム拮抗薬を併用し、3剤まで併用してもコントロールができなければ、bevは休薬でよいと思います。

坂本: ARBは、脳血管障害に対してはカルシウム拮抗薬よりも効果が弱いので、2剤目はカルシウム拮抗薬を使用したいですね。β遮断薬を加えてもよいと思います。ただ、この症例はARBで十分にコントロールできる可能性が高いと思います。

佐藤: もともと高血圧がある患者さんは、化学療法を始める前からカルシウム拮抗薬が入っていることが多いので、多くの症例ではカルシウム拮抗薬に、新たにARBなどを併用していくことになると思います。

大村: 降圧薬を2-3剤使用してもコントロールできない場合は、bevを減量されますか。それとも中止されますか。

瀧内: 進行性の癌患者さんの場合、薬剤が有効であれば、いかにそれを継続するかに焦点を当てます。まずbevを休薬し、血圧コントロールができてから、投与を再開します。減量は考えません。

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