WEBカンファレンス | 臨床の場で遭遇しうる架空の症例に対して、それぞれの先生方に治療方針をご提示いただき、日常診療における治療方針の選択にあたっての問題点等を議論していただいています。

CASE 18 Bevacizumab投与中の進行・再発大腸癌 2009年4月開催

CASE18 写真

ディスカッション 4

Dダイマー測定の意義は?

大村: Dダイマーについてはどのように考えていますか。本症例は、1サイクル目から正常値(1.0μg/mL未満)上限に近いのですが、徐々に上昇していきますね。

佐藤: 化学療法開始前の段階で高い場合は、まず血栓の有無を検索します。ただし、Dダイマーの臨床的な意味はまだ不明確であり、静脈血栓症の予測因子にはなりません。ですから、参考にはしますが、Dダイマーの結果のみでbevの投与法を変えようとは考えません。画像検査で体内に血栓がないかどうかを検索し、その後も十分に注意しながら治療を継続します。

大村: 超音波などの画像検査を行い、心房や下肢などを中心にスクリーニングされるということですね。

瀧内: 下肢や上腕のポートの入っている部分の腫脹など、何らかの症状がみられれば、血栓があることを考えて対処します。

坂本: 私も、お二人の先生方と同じです。Dダイマーは、あくまでも血栓などの合併症のリスクを推定する目処にはしていますが、その数値の変動だけでbevを中止したり減量したりはせず、症状や画像などから総合的に判断すべきだと考えています。

瀧内: 今年のASCO-GI cancers symposiumでの国立がんセンター東病院からの報告4)では、Dダイマーが3.0μg/mLを上回るようであれば、体内のどこかに血栓などがある可能性があるので、CTや超音波を撮影するなど、何らかの検索が必要だということでした。Dダイマーの数値が上がっていれば、必ず血栓があるということではなく、その可能性を考えて検査をすべき、ということだと思います。

大村: では、Dダイマーが3.0μg/mLを上回った場合、bevの投与はどうしますか。

瀧内: 当院では、通常は血栓がなければbevは中止しませんが、3.0μg/mLを超えたら、その日は投与しないと決めています。次回の測定で数値が下がっていれば、また再開します。

佐藤: 確かに、対処法を決めておかないと迷うだけですね。逆に言えば、決まった対処法があるからこそ測る意味がある。

大村: 本日は、実際の臨床で出会う可能性の高い症例に関して、有意義なディスカッションができたと思います。どうもありがとうございました。

※Dダイマーの正常値は試薬や機器によって異なります。今回のWEBカンファレンスでは、1.0μg/mL未満を正常値として論じています。また、文中の4)の報告でも、1.0μg/mLを正常値上限としています(Latex immunoassey法)。

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ディスカッション 3
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