WEBカンファレンス | 臨床の場で遭遇しうる架空の症例に対して、それぞれの先生方に治療方針をご提示いただき、日常診療における治療方針の選択にあたっての問題点等を議論していただいています。

CASE 18 Bevacizumab投与中の進行・再発大腸癌 2009年4月開催

CASE18 写真

私が考える治療方針

坂本先生

2サイクル目にアンジオテンシンII受容体拮抗薬を投与し、早めの高血圧対策を

本症例では、2サイクル目でCEAが下がり、4サイクル終了時にPRが得られていることから、FOLFOX+bevacizumab(bev)は適切な治療法だと考えられます。ただし、血圧上昇のみられた2サイクル目に、降圧薬として、腎保護作用を有するアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を投与したいところです。また、FOLFOXとFOLFIRIはどの順番であっても、双方を使用したほうがよい1)との報告があることから、FOLFIRIを1st-lineとすることも考えられます。KRAS BRAF などの検査が可能であれば行い、有効性が期待できる症例と考えられる場合は、FOLFIRI+cetuximabからスタートし、効果が得られなければFOLFOX+bevに移行する、という方法も今後考えていかなければならない選択肢です。

坂本先生 写真

瀧内先生

mFOLFOX6+bevはベストな選択。並行して厳格な血糖・蛋白尿・血圧のコントロールを行う

1st-lineをmFOLFOX6+bevにしたことは、ベストの選択だと思います。ただし、本症例は糖尿病の治療歴が長く、蛋白尿も(+)となっていることから、十分な注意が必要であると思います。さらに、4サイクル目も蛋白尿(2+)が続いているので、蛋白定量も考慮すべきです。また、血圧も上昇しており、早期からARBなどの降圧薬の投与も必要です。本来であればbevの休薬も考慮すべきですが、腫瘍縮小効果が確認されているため、やはりbevは継続投与したいところです。したがって、ここではmFOLFOX6+bevを継続しながら、しっかりと血糖・蛋白尿・血圧のコントロールを行っていくべきだと思います。

瀧内先生  写真

佐藤先生

蛋白尿をきめ細かくモニターし、bevの継続投与を検討する

本症例は、糖尿病の基礎疾患があるものの、1st-lineにmFOLFOX6+bevを選択したことは妥当だと考えます。ただし、2サイクル目ですでに高血圧がみられることから、腎障害の進展抑制を目指してACE阻害薬またはARBの投与を考慮します。本症例では、4サイクル目の蛋白尿が(2+)であったため、1日尿蛋白量を測定し、bev継続投与の有無を判断します。ただし、3サイクル目にすでに蛋白尿が(2+)となっていることから、この時点で1日尿蛋白量を測定してもよかったと思います。

佐藤先生 写真

大村先生

速やかな対応で、副作用による危険を可及的に回避する

Bevに限らず、がんの化学療法において適切な副作用対策は極めて重要です。まず、高血圧に対する降圧薬の投与は早めに開始したいと思います。2サイクル目の時点で明らかに血圧の上昇傾向を認めますので、まずARBの投与を始めます。経過を観察し、ARBの効果が不十分であったらACE阻害薬、カルシウム拮抗薬などを追加しますが、それでもコントロールできなければbevの休薬もやむをえません。蛋白尿については、尿蛋白の定性で2+以上が2回続いたら蓄尿の上、1日尿蛋白量を定量します。尿蛋白量が2g/日以上であったら、それ以下になるまでbevを休薬します。Dダイマーについては、上昇傾向にあるので測定を継続し、Dダイマーの値が時系列より3μg/mLを超えると考えられたら、念のため次回受診時に下肢深部静脈超音波検査を予約します。
いずれにしても副作用による危険を可及的に回避し、抗癌剤を大事に使いたいものです。

大村先生 写真
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