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10月
国立がん研究センター中央病院 消化管内科/頭頸部・食道内科 科長 加藤 健

大腸癌

転移性大腸癌患者に対するFOLFOXIRI+Bevacizumab±Atezolizumab(AtezoTRIBE試験):多施設オープンラベル第II相試験


Antoniotti C, et al.: Lancet Oncol. 23(7): 876-887, 2022

背景
 FOLFOXIRI+Bevacizumabは転移性大腸癌の1次治療の一つとして位置づけられている1-3)。また、転移性大腸癌の約5%に認められるdeficient mismatch repair(dMMR)もしくはmicrosatellite instability-high(MSI-H)を有する症例においては、免疫チェックポイント阻害剤も治療選択肢となる4,5)

 第III相試験であるKEYNOTE-177試験において、dMMRもしくはMSI-H転移性大腸癌に対して、抗PD-1抗体薬であるPembrolizumabは、Fluorouracilベースの化学療法と比較し、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した(PFS中央値16.5ヵ月 vs. 8.2ヵ月、ハザード比[HR]=0.60、95%信頼区間[CI]:0.45-0.80、p<0.001)6)

 しかしながら、転移性大腸癌の多くはproficient mismatch repair(pMMR)やmicrosatellite stable(MSS)であり、免疫チェックポイント阻害剤に治療抵抗性である7)

 FOLFOXIRIやBevacizumabは、免疫原性を高め、免疫チェックポイント阻害剤の治療効果を高める可能性が報告されている8,9)。そのため、本研究は、FOLFOXIRI+Bevacizumabに、PD-L1抗体薬であるAtezolizumabの上乗せ効果を検討するために実施された。

方法
 本試験は、イタリアの22施設が参加した多施設共同非盲検無作為化第II相試験である。主な適格基準は、組織学的に腺癌と診断された転移性大腸癌、年齢18~75歳、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)Performance Status(PS)2以下(71~75歳はPS 0)、RECIST v1.1による測定可能病変を有する、臓器機能が保たれていることであった。主な除外基準は、転移性大腸癌に対しての治療歴、Oxaliplatinによる術後補助化学療法歴、Fluoropyrimidine単剤による術後補助化学療法後6ヵ月以内の再発であった。

 対象患者は、FOLFOXIRI+Bevacizumab(対照群)またはFOLFOXIRI+Bevacizumab+Atezolizumab(Atezolizumab群)に、施設、ECOG PS(0 vs. 1-2)、原発占拠部位(右側 vs. 左側または直腸)、補助化学療法歴(あり vs. なし)で層別化され、無作為に1:2に割り付けられた。

 導入治療として対照群では、FOLFOXIRI(Fluorouracil:3,200mg/m2/48時間、Leucovorin 200mg/m2、Oxaliplatin 85mg/m2、Irinotecan 165mg/m2)+Bevacizumab(5mg/kg)、Atezolizumab群ではFOLFOXIRI+Bevacizumab+Atezolizumab(840mg)が投与された。両群とも14日間サイクルで、最大8サイクルまで実施され、それ以降は、維持療法として、対照群はFluorouracil+Leucovorin+Bevacizumab、Atezolizumab群はFluorouracil+Leucovorin+Bevacizumab+Atezolizumabによる治療を、不応、不耐、同意撤回まで継続した。

 治療経過中、奏効が得られ、外科的根治切除となった場合は、導入治療のレジメンを術前後合わせて最大12サイクル行い、その後は維持治療レジメンを切除後6ヵ月まで行った。

 MMRステータス、腫瘍変異負荷(TMB)、イムノスコアについても、治療開始前に採取したホルマリン固定試料で解析された。

 主要評価項目はPFS、副次評価項目は、安全性、客観的奏効率(ORR)、R0切除率、PFS2(無作為化から1回目の病勢進行後に投与された治療による2回目の病勢進行もしくは死亡までの期間)、TTF(治療成功期間)、2次治療でのPFS、全生存期間(OS)である。PFS以外の生存期間に関しては、解析時点ではデータが未成熟であった。

 PFSのHR=0.66(対照群のPFS中央値を12ヵ月、Atezolizumab群のPFS中央値を18ヵ月)を期待し、片側αエラー=0.10、検出力85%とし、サンプルサイズを計算するとサンプルサイズは201例、イベント数は129イベントであった。

 すべての有効性に関する解析はITT集団で行われ、安全性に関しては1回以上の投薬を受けた集団で解析された。PFSにおいて、比例ハザード性が成立しなかったため、各治療群の22ヵ月での境界内平均生存時間および群間差について事後解析として実施した。

結果
 2018年11月30日から2020年2月26日までに、218例が登録され、73例が対照群に、145例がAtezolizumab群に無作為に割り付けられた。214例(対照群72例、Atezolizumab群142例)が少なくとも1回の試験治療を受け、安全性の解析対象となった。カットオフ日は2021年8月1日であった。年齢中央値は61歳(IQR: 52-67)、全患者が白人であった。

 MMRステータスについては、218例中212例(97%)で結果が得られ、dMMRは13例(6%:対照群5例 vs. Atezolizumab群8例)であった。TMBについては、138例(63%)で結果が得られ、TMB-Highは16例(12%:対照群5例 vs. Atezolizumab群11例)であった。イムノスコアについては157例(72%)で解析がされ、イムノスコア高スコアは50例(32%:対照群18例 vs. Atezolizumab群32例)であった。追跡期間中央値は19.9ヵ月(IQR: 17.3-23.9)であり、218例中159例(73%)に病勢進行が認められた(対照群73例中60例[82%]vs. Atezolizumab群145例中99例[68%])。PFS中央値は、対照群が11.5ヵ月(80% CI: 10.0-12.6)、Atezolizumab群が13.1ヵ月(80% CI: 12.5-13.8、HR=0.69[80% CI: 0.56-0.85]、p=0.012)。比例ハザード性が成立していなかったため、実施された事後解析では、22ヵ月での境界内平均生存時間は、対照群で11.9ヵ月(80% CI: 11.0-12.9)、Atezolizumab群で13.6ヵ月(80% CI: 12.9-14.4)であり、群間差は1.69ヵ月(80% CI: 0.52-2.87、p=0.033)であった。

 PFSのサブグループ解析では、MMRステータス(pinteraction=0.010)、TMB(pinteraction=0.0061)、イムノスコア(pinteraction=0.0029)では有意な交互作用が認められ、dMMR、TMB-High、イムノスコア高スコアでは、対照群よりAtezolizumab群でより高い治療効果が認められた。多変量解析でも、Atezolizumab群のPFSにおいて、dMMR、TMB-High、イムノスコア高スコアが独立した因子であった。dMMR症例では、13例中7例(54%)に病勢進行が認められた(対照群5例中5例、Atezolizumab群8例中2例)。dMMR症例のPFS中央値は対照群では6.6ヵ月(80% CI: 4.5-27.5)、Atezolizumab群では未達(80% CI: 未到達-未到達、HR=0.11[80% CI: 0.04-0.35]、p=0.0021)であった。Atezolizumab群のdMMRの8例中2例で病勢進行を認めており、病勢進行を認めた2例はイムノスコア低スコアであった。pMMR症例でも、TMB(pinteraction=0.012)およびイムノスコア(pinteraction=0.0058)で有意な交互作用が認められた。

 pMMR症例において、125例でTMBが解析され、7例(6%)がTMB-Highであり、147例でイムノスコアの解析がされ、47例(32%)がイムノスコア高スコアであった。

 ORRは、対照群で73例中47例(64%)、Atezolizumab群で145例中85例(59%)であった。対照群では、4例(5%)が完全奏効、43例(59%)が部分奏効であり、Atezolizumab群では、9例(6%)が完全奏効、76例(52%)が部分奏効であった。対照群では73例中27例(37%)がR0切除を受けたのに対し、Atezolizumab群は145例中38例(26%)であった。

 Grade 3-4の有害事象は、対照群72例中44例(61%)、Atezolizumab群142例中95例(67%)に認められた。主なgrade 3-4の有害事象は、好中球減少症(対照群72例中26例[36%]vs. Atezolizumab群142例中59例[42%])、下痢(9例[13%]vs. 21例[15%])、発熱性好中球減少症(7例[10%]vs. 14例[10%])、口内炎(6例[8%]vs. 6例[4%])、静脈血栓塞栓症(4例[6%]vs. 6例[4%])であった。Grade 3-4の免疫関連有害事象は、対照群72例中1例(1%)(アミノトランスフェラーゼ増加)、Atezolizumab群142例中4例(3%)(肺炎1例、アミノトランスフェラーゼ増加2例、高血糖1例)であった。重篤な有害事象は、対照群19例(26%)、Atezolizumab群39例(27%)であった。

 不耐による治療中止は、対照群は0例、Atezolizumab群で3例(2%)であった。中止の理由は、口内炎および手足症候群、サブイレウス、好中球減少症であった。対照群72例中41例(57%)、Atezolizumab群142例中93例(65%)で少なくとも1回の減量が行われた。

 データカットオフ時点で、218例中70例(32%)が死亡していた(対照群28例[38%]、Atezolizumab群42例[29%])。死亡の多くは病勢進行によるものであった(対照群28例中23例[82%]、Atezolizumab群42例中34例[81%])。治療関連死は、対照群は0例、Atezolizumab群で2例(急性心筋梗塞1例、気管出血1例)であった。

まとめ
 転移性大腸癌患者において、初回治療のFOLFOXIRI+BevacizumabにAtezolizumabを追加することでPFSの延長が示された。比例ハザード性が成立していなかったものの、22ヵ月での境界内平均生存時間においてもAtezolizumabの有効性を支持している。

 本試験が計画された時点では、dMMRに対しての免疫チェックポイント阻害剤の有効性に関しては、エビデンスが確立しておらず、本試験はdMMRおよびpMMRの両方が対象に含まれており、MMRステータスについても層別化因子に含まれていなかった。しかし、治療群間でのdMMR症例の分布に不均衡は認められなかった。

 サブグループ解析では、pMMR症例において、TMBとイムノスコアは有用なバイオマーカーである可能性があり、pMMR症例でのTMB-Highは7例(6%)、イムノスコア高スコアは47例(32%)であり、ITT集団における多変量解析でもそれぞれは独立した因子であった。

 1次治療でのFOLFOXIRI+Bevacizumab+Atezolizumabは忍容性があり、pMMR転移性大腸癌患者において、さらに検討する価値がある。また、1次治療での免疫チェックポイント阻害剤の有効性を検証する場合は、TMB-Highやイムノスコア高スコアの症例を対象に検討することが望ましいと考えられる。


日本語要約原稿作成:大阪医科薬科大学 化学療法センター 由上 博喜



監訳者コメント:
MSS切除不能大腸癌における新たな可能性

 本邦における大腸癌に対する免疫チェックポイント阻害剤(ICI)はKEYNOTE-158試験とKEYNOTE-164試験のデータに基づき、Pembrolizumabが承認され、次いでCheckMate 142試験においてNivolumab単剤療法とNivolumabとIpilimumabの併用療法が同対象に使用可能である。MSI-H症例に対しての有効性は明瞭に示されており、今後も開発が活発に進むことが予想される。

 しかしながら、MSS症例に対する治療開発は難渋している。一般的にMSS大腸癌を取り巻く免疫微小環境は、マクロファージやeffector lymphocytesが十分に存在せず、ICI単独では効果が限定される。そのため、免疫微小環境の改善やlymphocytes等の腫瘍内浸潤を促進することを期待して、サルベージラインではさまざまな分子標的剤やマルチキナーゼ阻害剤との組み合わせで臨床試験が行われている。

 本研究は、MSSを含む切除不能大腸癌を対象にTriplet+Bevacizumabに抗PD-L1抗体薬であるAtezolizumabの上乗せ効果を検証する目的で行われた第II相試験である。

 結果としては主要評価項目であるPFSをAtezolizumab群が有意に上回った(HR=0.69[80% CI: 0.56-0.85]、p=0.012)。安全性においても、両群ともにそれほどの差はなかった。本研究に至った仮説の背景はTripletなどの活性の高い化学療法を併用することで、腫瘍関連抗原の放出を誘発させることで宿主の免疫応答を刺激し、VEGF阻害薬によってCD8陽性T cellsのinfiltrationの改善を促し、免疫的にColdなTumorをHotな状態へ導くことを期待してICIであるAtezolizumabによるさらなる上乗せ効果を狙ったものである。本試験にはdMMR症例も13例含まれており、それらを除外したpMMRのみに限定した解析においてもHR=0.78(p=0.071)とMSSの一部の症例でも有効性を示唆する結果であった。

 MSSへのICIの有効性といった点ではいまだ十分に満足できる結果ではないが、生存曲線を鑑みても後半にAtezolizumab群が上を行く傾向があり、MSS大腸癌の一部にICIの効果が得られる対象が一定数存在する可能性は高い。今後は効果予測ができるバイオマーカーの開発、さらにICIの効果を高める有望なcombinationなどの治療開発が必要であろう。

  •  1) Cremolini C, et al.: Lancet Oncol. 21(4): 497-507, 2020 [PubMed] 
  •  2) Cremolini C, et al.: J Clin Oncol. 38(28): 3314-3324, 2020 [PubMed]
  •  3) Cremolini C, et al.: Lancet Oncol. 16(13): 1306-1315, 2015 [PubMed]
  •  4) Trullas A, et al.: ESMO Open. 6(3): 100145, 2021 [PubMed]
  •  5) National Comprehensive Cancer Network: NCCN Guidelines. Colon Cancer Version 2, 2022 [https://www.nccn.org/guidelines/guidelines-detail?category=1&id=1428]
  •  6) André T, et al.: N Engl J Med. 383(23): 2207-2218, 2020 [PubMed]
  •  7) Le DT, et al.: N Engl J Med. 372(26): 2509-2520, 2015 [PubMed]
  •  8) Moretto R, et al.: Eur J Cancer. 135: 78-88, 2020 [PubMed]
  •  9) Shrimali RK, et al.: Cancer Res. 70(15): 6171-6180, 2010 [PubMed]

監訳・コメント:大阪医科薬科大学 化学療法センター 山口 敏史

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