抗VEGF抗体 (Bevacizumab) は複数の第III相試験により、1st-lineおよび2nd-lineにおける有用性が示されている。現時点では、抗EGFR抗体と直接比較した試験データがないため、両者の有効性を比べることはできないが、ほぼ同等と考えられている。
抗VEGF抗体特有の副作用には注意が必要なものもあるが (血栓症、消化管穿孔など) 頻度が低く、また頻発する副作用 (高血圧、鼻出血など) も比較的対応しやすい。ただし、使用に際してはどのような副作用が起こり得るかを把握し、緊急時の対策を備えておくことが必須である (
虎の巻 第4回参照)。また、併存疾患などによっては適さない場合もあるので、患者のプロファイルや本人の意思を確認したうえで選択する。
抗EGFR抗体は
KRAS 野生型患者において、1st-lineから3rd-lineまでの全治療ラインにおける有効性が証明されており、ガイドラインでも全ラインで推奨されている。抗腫瘍効果が高く短期間で奏効が得られやすいこと、皮膚障害に対するケアが必須であること、また皮膚症状は時間の経過によって広範囲にわたることから、比較的短期間で奏効を得たい症例に適しているというのが、虎の巻委員会の医師の意見である。
具体的には、「腫瘍の増殖スピードが速く、“5剤をゆっくり使いきる”という治療戦略に

適さない症例」、「切除可能な転移を有する大腸癌に対する術前補助化学療法 (neoadjuvant chemotherapy)」、「conversion therapy (
其の四参照)」などが考えられる。
また3rd-lineでは、CPT-11あるいは単独での投与となるが、抗EGFR抗体自体は皮膚障害以外に日常で問題となるような副作用がなく、かつ3rd-lineにおいても腫瘍の縮小やQOLの改善が得られることから、できるだけ長く投与するという戦略もある。