レジメン講座 | 抗癌剤併用レジメンの投与法を解説します。

S-1+Oxaliplatin(L-OHP)+Trastuzumab(Tmab)

*S-1の用量は体表面積(m2)により調整
<1.25=40mg×2; 1.25−<1.50=50mg×2; ≧1.50=60mg×2

Chin K, et al.: Ann Oncol. 29(suppl_8): viii224-225, abstr #667P, 2018
Yuki S, et al.: Ann Oncol. 29(suppl_8): viii225, abstr #668P, 2018

治療歴のない切除不能進行・再発HER2陽性胃癌に対する、S-1+L-OHP(SOX)+Tmab療法の2つの第II相試験、HIGHSOX試験1)とKSCC/HGCSG/CCOG/PerSeUS1501B試験2)の結果がESMO 2018で報告されている。L-OHPの用量は、G-SOX3)の100mg/m2(3週毎)ではなく、両試験ともに切除不能進行・再発胃癌の承認用量である130mg/m2(3週毎)が用いられている。

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■有効性

HIGHSOX試験1)、KSCC/HGCSG/CCOG/PerSeUS1501B試験2)は、ともに奏効割合(RR)を主要評価項目に設定した第II相試験で、それぞれ統計学的な設定をクリアした。しかしながら、異なる統計設定で計画された試験で症例数も大幅に異なっている。いずれもRRの点推定値は70%を上回っており、ToGA試験4)のHER2高発現群やSP+Tmabの試験結果5,6)と比較して良好な治療成績が示されたといえる。

  HIGHSOX試験
(n=75)
KSCC/HGCSG/CCOG/PerSeUS1501B試験
(n=39)
RR
(95% CI)
70.7%
(59.0-80.6%)
82.1%
(67.3-91.0%)
無増悪生存期間
(95% CI)
8.8ヵ月
(7.4-12.2ヵ月)
7.0ヵ月
(5.5-14.1ヵ月)
全生存期間
(95% CI)
18.1ヵ月
(15.6-26.5ヵ月)
27.6ヵ月
(15.6-NA)

■安全性

毒性プロファイルには異なる点がいくつかある。好中球減少(any Grade/≧Grade 3)はHIGHSOX試験で78.7%/10.7%で、KSCC/HGCSG/CCOG/PerSeUS1501B試験では76.9%/12.8%であり、ほぼ同様と思われるが、血小板減少はHIGHSOX試験で78.7%/1.3%に対して、KSCC/HGCSG/CCOG/PerSeUS1501B試験では94.9%/17.9%と高頻度である。末梢神経障害(any Grade/≧Grade 3)に関しては、HIGHSOX試験で84.0%/16.0%、KSCC/HGCSG/CCOG/PerSeUS1501B試験で82.1%/5.1%と低頻度であった。悪心下痢などの有害事象はany Grade/≧Grade 3ともに同程度であった。いずれにしても両試験により、SOX+Tmab療法のXP/FP+Tmabと比較して遜色のない安全性が示されており、入院不要なレジメンである点はメリットである。また両試験とも大腸癌を対象に行われたSOFT試験7)の結果を参考に、次コース開始時の血小板減少Grade 2を認めた場合にL-OHPの減量開始が規定されていた。HER2陰性の1次治療で通常用いられるL-OHP(100mg/m2)よりも高用量(130mg/m2)であることが両試験で示された高い抗腫瘍効果に寄与した可能性はあるが、実臨床での使用にあたっては両試験の減量基準などを参考にする必要があるだろう。

レジメン解説執筆:がん研有明病院 消化器化学療法科 中山 厳馬 先生/高張 大亮 先生

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